歩く肉

春原さんのうたの歩く肉のネタバレレビュー・内容・結末

春原さんのうた(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

大切な人を喪った痛みに、静かに向き合っていくというプロットは『四月の永い夢』を彷彿させるし、淡々とした日常の大部分をフィクスで撮るのは『ジャンヌ・ディエルマン』に近いものを感じたが、本作は全く好きになれず…
単純にアプローチも画も台詞も面白いとは全然思えない。固定に耐えられる構図が少なく、全体的に凝視を強制させられたような気分になった。
劇中に出てくる、世田谷美術館の何もない展示室で鑑賞者が何もない空間に手をかざしたり、何かスピリチュアルなものを感じている場面があるけど、私がこの映画に抱いた印象は、その光景を見ているときと近い。

コロナ禍における人と人との繋がりも本作においてポイントだろうけれど、どこから湧いてきたのか、どんな関係性にある人なのか、よくわからないまま、人物がどんどん出てきて、善意の押し付け感に疲弊してしまった。そもそも語られていない物語の後日談と言われても、ピンとくる訳がなく、かつ、自分はおそらく優しい人間ではないから、響かなかったのかも知れない。
本末転倒なことに、映画館を出た頃には、人と人の繋がりをさらに億劫に感じてしまった次第。
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