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くじらびとのtottsunのレビュー・感想・評価

くじらびと(2021年製作の映画)
4.0
「くじらびと」🎬66
インドネシア東部にあるラマレラ村ではクジラのモリ打ち漁が行われており、その中でも「ラマファ」と呼ばれる漁師たちは村人たちに一目置かれている。年間10頭ほど獲れれば村人全員が暮らせるだけの収入になるクジラ漁は、常に死と隣り合わせでもある。それでもモリ一本で巨大なマッコウクジラに挑む姿を見て、子供たちはラマファに憧れる。
今年は個人的「クジラYEAR」だと思う。「52ヘルツのクジラたち」を読み、クジラの鳴き声に魅了され、「海獣学者、クジラを解剖する。」を読んだ。そこからバブルネットフィーディングという独特な漁をするザトウクジラの動画に釘付けになった。
そんな中今作の予告を見たもんだから「これは私が見るべき映画だ!」と運命のようにさえ思えた。
これは生きようとするもの同士の戦いを描いたドキュメンタリーである。
クジラは血飛沫をあげ、海を真っ赤に染めながら尾びれをばたつかせ、もがく。その光景はまさに血の海だった。一方で銛一本でクジラたちに立ち向かう人間は自分たちが飢えぬようにと村人1500人を救うため立ち上がる。
前半はクジラ漁を長年受け継いできたラマレラ村の人々の生活を映す。
クジラが獲れないときはマンタやジンベイザメを獲って生きている。
クジラが獲れれば肉は食料にもなる上、バナナなどの山の食材とも交換できる。
そして親子代々、漁の仕方や、漁に使われる船の作り方、漁や生活にまつわる知恵が脈々と受け継がれていく。
もちろんそれが命に直結していることも。
そしていよいよクジラに挑む時。
ドローンや水中カメラなど様々な機材で撮影された漁の現場は迫力と生々しさが溢れ出る映像で一気に引き込まれた。
これはうまく口では語れない…
そして時間をかけてようやっと捕らえた獲物を浜辺に持ち帰って村人総出で切り分ける。
身を余すことなく、油や内臓でさえも綺麗に分け与える。そして最後に残るのは巨大な骨のみ。
本当に圧巻な映像だった。
子供の頃、田舎ゆえスーパーに普通に売られていたクジラとイルカの肉。
口にすることは無かったけど、その肉がああやって切り分けられた命なんだと妙に納得してしまった。
江戸時代の日本人もおそらく今日見た映像のように向き合ったのだろう。
2021年の日本ではなかなかお目にかかれない光景のように思えた。
私的には☆☆☆☆かな。
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