バリカタ

流浪の月のバリカタのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.5
これは切ない純愛映画だと思います。

こんなにも重厚でやるせない、終始胸を締め付け続ける作品だなんて!いいぞーいいぞー。映像もよかったなぁ。撮影監督の力量なのでしょうか?映像が綺麗なんですが残酷で冷徹な雰囲気が溢れ出ているんです。それが作品をビシーっと締めてくれるんですよね。いやぁ、なかなか味わえない雰囲気でした。

原作未読です。早速読みたくなってます。自身ではどうしようもない事が起因にもかかわらず、正義感と一般的には優しいと言われる対応をする無責任な世間の波に追いやられる。どうかどうか救われるようにと願い続ける上映時間150分。これが不思議に長いと感じません。なんというのでしょうね、小説を1ページ1ページ読み進めて行っているような感覚になりました。

俳優陣、よかったですね。特に松坂桃李さんと横浜流星さん。見事でした。本作の柱をしっかり作ったなぁって思いました。他の演者さんもよかったですけどね。

なんでこんなに切ないんだろう?やるせないんだろう?きっと更紗の迷走する小さな心の行方にぐいぐいと引き寄せられたのだろうなぁ。そうなんだよなぁ、本作は世間の常識と良識に監視される袋小路に迷い込んだ男女の純愛恋愛物語なんだよなぁ。ただただ、生まれ持ったネガティブ状況から逃れ、自分らしく居られる場所を探し求めているだけなのに。けど、ボタンのかけ違いが続くってこういうことなのかなぁ?

個人的にはあのカミングアウト結末は・・・ちょっと残念だったなー。原作も同じなのかな?
うん、それは要因ではあるだろうけどさ、その特徴があるから心に何が生まれて、例の行動の動機につながったのか?が僕の中では結びつきにくかったんです。
あとは、たった一人でもいいから「いい人」を出して欲しかったなぁ。「良い大人」を。彼らに本当に寄り添う大人を。ちょっとね追い込みすぎな気がしました。

けどけど、上半期の邦画でベスト級でした。