月うさぎ

ミラベルと魔法だらけの家の月うさぎのレビュー・感想・評価

ミラベルと魔法だらけの家(2021年製作の映画)
3.9
やはりうまいですよね。いい映画でした。鉄板です。
映画館で予告を観て、映像は綺麗だし、よく作られているのは間違いないだろうけれど、これは観ないな、と思っていました。ディズニーのポリコレの向かう先は今度はヒスパニックか…と思ったのも一因です。
主人公の顔が濃すぎて可愛くない。おばさん?って感じ。なんで有色人種のキャラクターは普通に可愛い子にしてくれないんだろ?とも思いました。
「ミラベルと魔法だらけの家」ってタイトルもうざったい。原題:Encantoをどうしたら、こうなる?
(某有名小説シリーズのパクリである事は明白ですね)

…と、色々ケチはつけましたが、テーマはしっかりしています。見応えありでした。

ミラベルはエンカントという名の示す通りの魅惑的な街に暮らす女の子。彼女の家族マドリガル家の人はみな「特別」な人たち。奇跡とか「ギフト」と呼ばれる不思議な力を与えられているのです。その力は、内戦で故郷を追われ傷ついた人たちに、安心して暮らせるホームを築くために使われます。街の人々も彼らに憧れ、感謝し、敬い愛しています。
奇跡の力を証明する決して消えないロウソクの炎と共に、家族は結束していました。
そう、あの日までは…。

彼らの力は神かそれに近い存在からの贈り物。
しかし家族の中でミラベルだけが、定められた特別な日に、ギフトを授かる事ができなかった。
深い心の傷を抱えつつなお、ミラベルは明るくポジティブに自分のできる事で役に立ちたい、家族として協力したいと努力しています。

優秀な家族の中で劣等感を持ったり、疎外感を感じたり、それを気にしないフリをしたり。
役に立つとか有能だとか容姿が優れているとか、そんな長所で人の評価が下される。
どちらもよくある話ですね。

特技もなく平凡な、でも愛すべき人っていますよね。
その人がその人である事、それだけで大切な人なのです。
能力で人の価値が決まるなら、その能力が失われればその人の価値も消滅する訳ですか?それはあまりに虚しいです。

幸せな暮らしの真っ只中に不意に起こるひび割れ。
家に入ったひび割れは実は家族に入った亀裂だったのですね。

家族を愛する事が自分を殺し家のために尽くす事と同意であってはなりません。
何かを守るために何かを犠牲にするのは当然であるという考え方は間違いなのだと、この映画は語っています。

そしてミラベルが再び家族の絆を取り戻すための「ギフト」そのものだったという結論なのかな、と思われました。

ただ、わかりにくい部分があるという点がウィークポイント。
ミラベルだけがギフトを貰えなかったのはなぜ?も推測するしかないですし、イントロ部分の家族やギフトの紹介も早すぎてわからないし、そもそもギフトって何?とかこの家は意思があって勝手に生きてるの?とか、混乱させられてしまい、事前に情報がないと置いていかれる気がしました。
ブルーノの「ヴィジョン」というのも、初め何のことだかわかりませんでした。
ちなみに最初日本語、次に字幕で観ましたが、「英語で字幕」 の方が意味がわかりやすかったのですよ。
ミュージカル仕様の限界かも。歌は感情を伝えるのには適していますが、説明をするのには向いていないのでは?

もうひとつの特徴ですが、ファンタジーのフリをしつつ、この映画の舞台はコロンビアであると明言しています。内戦の事、スペイン語圏である事、食事、衣装、家の造り、自然の景観も。
よく見かけるなんちゃってジャパンのようなことはなく、コロンビア人のスタッフ、監修など多くの人が参加している模様。
飾らない祖国愛もこの映画の特徴です。

この映画、むしろ実写の方がいいのでは?という気にもなりました。
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