いわし亭Momo之助

北風アウトサイダーのいわし亭Momo之助のレビュー・感想・評価

北風アウトサイダー(2022年製作の映画)
3.5
群像劇としては稀有の出来

沢山の登場人物が出てきて、モザイクの様に一つの絵を完成させていくという手法は面白いのだけれども、多くの場合、主役とわき役、事実関係の整理、ドラマの語り口の稚拙さ等々の問題で、失敗に終わることが多い。
ところが、この作品の持つ凄まじいエネルギーは、なんと登場人物にわき役がいない という奇跡的な展開を見せている。もちろん、主役は母親の死をきっかけに15年ぶりに姿を現す失踪中だった長男ヨンギではあるが、全ての登場人物にちゃんとした役割が与えられ、目配りの聞いた演出の先にドラマが進行する。
これは古くからある家族の再生を描いたドラマではあるのだが、在日の第二、第三世代の現在と地続きのお話しであることがリアルだ。舞台は大阪の生野。まさに混沌とした映画的な街である。ここが舞台というだけでもワクワクするではないか。