めんたいこ

沈黙のパレードのめんたいこのレビュー・感想・評価

沈黙のパレード(2022年製作の映画)
4.0
フェアプレー精神に脱帽する。

容疑者Xの献身でも強く感じたが、ガリレオシリーズのフェアネスには敬服せざるをえない。

小説であればさり気なく流せる"重要な描写"は、映像で直接的に描けば描くほど露骨になってしまう。しかしその描写を避ければ信頼できない語り手のそしりを受けることになるだろう。
※ トリックとしての「信頼できない語り手」は技術のひとつだが、映像作品でそもそも映さないというのはまた違った問題だ

本作は容疑者Xの献身での問題(映像がネタバレに直結している)をクレバーな手法で解決している。すなわち物語上の意味を二重に持たせることで、視聴者の違和感をできるだけ感じさせないことを成功させている。
これだけでひとつの発明と言っていい。シリーズ物で過去の問題をクリアしてくれるのは、連作を見ているファンへの真摯なプレゼントと言っていいだろう。

非常に良い作品だと思うのだが、下記2点気になるところがある。

ひとつ。トリックのためのトリックといった展開が、少々興を削ぐ。複数犯による組織的な犯行に加え、その中で個々の思惑が交錯するというボリューミーな展開は2時間の尺では描ききれないものではなかっただろうか。そのため視聴者が考えながら観るというより、立て続けに起こる展開に面食らうといった問題が起こっているように思う。また人物の相関関係も少々ご都合主義ではあるまいか。

ふたつ。上記トリックの弊害でもあろうが、容疑者蓮沼の計画が結果的に破綻している箇所がある。ネタバレに触れるのは本意ではないため付言は避けるが、この部分に関しては素直に不満が残る。

上述の通りパーフェクトな作品とは言えないが、役者陣の熱演も相まって深みのあるドラマとなっている。「沈黙」という難しい演技に真正面から向かい合っている点も素晴らしい。
オススメです!!!!

追伸
容疑者Xの献身、以前レビューした記憶がむっちゃあるのだけど、なぜかFilmarksに残っていない。実に面白い。