織田

沈黙のパレードの織田のレビュー・感想・評価

沈黙のパレード(2022年製作の映画)
3.5
前半40分くらいは面白かった。というか、トイレに立とうと一時停止したらシークバーであと1時間30分って出ていて、こんなに濃厚だったのにまだ半分も経ってないんだと驚いた。この人が犯人であってほしくない──と、観ているこちら側の移入を誘う人々の描写力は凄まじい。冒頭の力強くも美しい並木佐織のJupiterと紡がれる半生は、彼女と彼女を支える周囲へ鑑賞者が心の比重を傾ける理由に十分足りうるものだったと思う。

ただ、蓮沼亡き後は「沈黙」というキーワードにとらわれすぎた感じで、急激にペースダウンしたように思えた。このシリーズは誰かを庇うというやるせなさが一つの見どころだと思うものの、『沈黙のパレード』では取り調べのシーンが次々と介入して、強調されるのは各々の「沈黙る」行動ばかり。事故的な部分もあったとはいえ、トリックもあまりにコスパが悪いように思えて仕方ない。

この映画では、完黙された過去を持つ草薙の戦いもメインテーマになっている。とはいえ彼が蓮沼に執着する姿や、過去負った傷に苦しむ姿に説得力があったかと言われればそれも違うと思っていて、その執念のほどを示すには足りなかったと思う。沈黙する人たちも同様で、序盤に一度は大きく移入したはずの感情の行き場がなくなってしまった。なお、パレード中に入ってきた電話のシーンで最悪のシナリオを予想していたのだけど、それは外れたようでほっとした。
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