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猿の惑星:創世記(ジェネシス)のOASISのレビュー・感想・評価

4.0
言わずと知れたSF映画の金字塔「猿の惑星」の新シリーズ第一弾。
「新世紀(ジェネシス)」の復習の為、Blu-rayを購入したので鑑賞。
シリーズ的な位置を気にせずとも、この一本のみで大いに満足出来る傑作。

アルツハイマー型認知症の新薬を投入された母親の遺伝子を受け継ぎ、生まれながらにして高い知能を持つシーザー。
そして彼の育て親であり研究者のウィルと、アルツハイマー型認知症を患うその父親。
前半部分では彼らの友情・愛情が時間の経過と共に実に丁寧に、エモーショナルに描かれていく。
名優ジョン・リスゴーの演技も実に悲哀を誘う。

そして後半からは、ウィルの父が近隣の住民とトラブルを起こし、それを助け出そうとしたシーザーが保護施設へと送られる事になり、施設とは名ばかりの監獄から抜け出すという「脱獄モノ」へとシフトしていく。
この手際、語り口のテンポ良さが見事過ぎる。
ゴリラやオランウータンといった仲間を集めて「革命」への準備を着々と進める最中、人間達の執拗なイジメに耐え続けたシーザーが言い放つ「嫌だ!」という咆哮は全身を貫くこの上ないカタルシスであるし、その快感は筆舌に尽くしがたい。
嫌味な看守を演じたマルフォイことトム・フェルトンの憎たらしさ溢れるキャラクターも、その圧倒的な開放感に一躍買っている。
これは、監督であるルパート・ワイアットの長編第一作目「DATSUGOKU-脱獄-」で見せた手腕がこの上無く発揮されている部分でもある。

満を持して「革命」を起こしたシーザー達によって蹂躙される街、ありとあらゆる文明の破壊、人間への報復。
そして仲間達を率いるシーザーの、人間の男よりもたくましくて凛々しいその姿には指導者としての威厳すら感じさせる。
しかも台詞ではなく表情で語る俳優顔負けの演技は、モーションキャプチャーを担当したアンディ・サーキスの大手柄で、見事にシーザーに命を吹き込んだ。

とにかく一本の映画として良くできていて素晴らしいのだけど、それだけでは無く随所に旧作へのオマージュも捧げられている。
火星探査中に行方不明になった「宇宙船イカルス号」や、オランウータンの名前である「モーリス」など上げればキリが無い程ニヤリとするネタが仕込まれている所も実に憎い。
そしてそれを100分にまとめる技量も恐るべし。

できればルパート・ワイアットに引き続き担当して欲しかったが次作「猿の惑星:新世紀(ジェネシス)」の監督は「クローバーフィールド」のマット・リーヴスだそうで、ちょっと心配である。
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