Eryyy678

ブレードランナー ファイナル・カットのEryyy678のレビュー・感想・評価

4.4
近未来SFの名作。公開当時は82年で、映画の舞台が2019年なので、もう未来じゃないけど。

「レプリカント」
タイレル社によって造られた、人造人間。人間と同等、あるいはそれ以上の知性と肉体を持った彼らは、人間に代わってあらゆる過酷な労働に従事していた。しかしある時、一部のレプリ達が脱走する。彼らを始末する任務を負った「ブレードランナー」。その元捜査官である主人公″デッカード〟は、レプリ達を捜索、始末する任務を受ける。

レプリカントの人物描写は、それぞれが強い感情と個性を放ち、タイレル社で働いている″レイチェル〟は、敵ではないが、創造主タイレル博士の姪の記憶を移植された、ある種特別な存在。しかし、自分を人間だと信じていた彼女は「自分じゃない誰か」の記憶を移植された事実を知り、苦悩する。デッカードと彼女の出会いは、やがて2人を「特別な感情」へと導くことになる。

アジアンテイストでどこか怪しい映画の世界観が好きです。「強力わかもと」の電光掲示板には笑いました。
「生きること」を求め人間に反旗を翻したレプリ達。彼らの行動も、表しようのない悲しみに満ちている。デッカードとレプリ達との戦いは、過度な派手さはないんだけど、ある種恐怖を醸し出すような演出と緊張感に、目が離せませんでした。

ストーリーとしては、人工生命体を創造することの是非、倫理についても考えさせられるものがありました。けれど、倫理の基準の良し悪しを決めるのは、いつも人間であって、現実世界でも、今は良くないとされてることが、未来でもそうなっているとは限らない。だから人造人間を造ることに、人々が何も「感じない」未来もあるかもしれない。なんとなくそんなことを考えてしまいました。そして「可能性」の裏には、常に負の側面が存在しているということも。

でも「愛情」という感情は、いつの時代も変わらない。だから、デッカードの選択も理解できるし、一見難解なイメージを与えるこの映画の、わかりやすいテーマでもあると思います。

「Do you trust me?」
レプリカントの女性に命令するのではなく、問いかけるデッカードのこのセリフが好きです。

″I love you〟″I want you〟″I trust you〟
言葉って大事ですね。シンプルだけど、日本語では表現できないような感情が込められているように思います。レプリカントだからこそ、言葉の一つ一つに深い意味を感じる。
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