Azmin

LAMB/ラムのAzminのレビュー・感想・評価

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.6
予告編を劇場で見た時からとっても楽しみにしていた。

なぜか公開初日から満席で、平日の月曜日でも大盛況。
やっぱりみんな、あの子が気になるからかな?

舞台はアイスランドの広大な農場。
冒頭から姿は見えないけど荒い息づかい、怪しげな目線での、怯える羊たちが映りただならぬ様子。
もうそのシーンだけで十分恐ろしいイマジネーションが働きました~。

その後の一人娘を亡くした、ノオミ・ラパスと夫との淡々とした生活が一変する事件。
こちらはホラーなのか、ファンタジーなのか区別のつかない不思議な展開。

きっとアダちゃんの存在が可愛くて、いつの間にか不気味さを完全に上回っていたせいで、私的にはメルヘンが入った世界に見えてきた。
お顔は羊だけど、体はほぼ人間という姿。
下手すると、安っぽい人形劇仕立てになりそうなところ、子供が10人掛りで演じたそうで、確かにリアルで可愛さ満点のアダちゃん。

この子を自分たちの本当の子供として、愛情たっぷりに育てるノオミ夫妻。
そこに突然転がり込んで来る、元ミュージシャンの夫の弟。
この人の存在がなかなか良かった。

初めて兄夫婦にアダちゃんを紹介された時の表情。
これがもう可笑しくて!
何より当たり前のように、羊人間の子供を登場させる夫婦の心情がかなりヤバイ。

アダちゃんを産んだ羊が、家の前を何度もウロウロした時のノオミの「出ていけー!」の一言。
もうド迫力で笑いました。
そして遂には羊を撃ち殺してしまう。
ちょっとやり過ぎだけど、それだけ本当の母親になってる証拠かな。

しばらくはアダちゃんを交えての夫婦と義弟とのしあわせな日々が続きますが、事態はだんだんダークな展開へ。

何かが起こりそうな不穏な空気感、静かに漂う暗い音楽。
なかなかの演出に、単調なストーリーも複雑に感じた。
そしてクライマックス、こちらは想像を絶するような、やはりそうか!と納得するような締め方でした。

期待していたよりサスペンスも入ってないし、禁断と言えば禁断だけど、主役の羊ちゃん達がはかなげな雰囲気を醸し出し、見る者に幻想的なイメージを与えて効果大。
ノオミ・ラパスの表情もアンニュイで良かった。

最後は自業自得の流れなのかもしれない。
ただ忠実なワンちゃんは気の毒で、好きな方には辛いかも……。
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