maya

エレクション 黒社会のmayaのレビュー・感想・評価

エレクション 黒社会(2005年製作の映画)
4.6
結末を迎えるまで、ロクは「中国の理想的なリーダー像」だし、ディーとロクのくだりやロクの会長就任劇は三国志ばりの英雄譚だった。ただ、ジョニートーがそんなに甘いわけないという点と、あまりに痛々しい暴力や死に様の徹底ぶり故に、そんな中国古典ファンタジーみたいなお話で終わってくれるはずないのでは?という不安を見事に回収する結末。そもそも「満洲族の侵略に対し復讐を誓った五人の漢人」というオリジンストーリーに、「中国本土に支配される香港」が呼応して、かなり不穏。洪門会は漢人側な訳だが、多分「中国本土=侵略側」だし、杖が中国本土にあるの、「実権は本土」の象徴では。
インタビューによると、ジョニートーが描きたかったのは「香港返還以降、直接選挙が失われたこと」とのことで、やっとタイトルに納得。香港映画を見るまで、香港のことは「可哀想だけどどうしようもないよね...」という目で見てしまってたところがあったのだけど、ジョニートーや王家衛にハマり始めて、一気に他人事で片付けられなくなってしまった。ノワールはそれ自体をエンタメとして楽しめるケースもあるけど、「明らかに社会で起きていることで、直接描けないことを裏社会に置き換えて描く」というときに、最先端の同時代性を発揮する点に価値があると思う。あの時の香港から、今の香港を知る私たちに対し、非常に生々しいメッセージを届ける作品だと思う。
ちなみに韓国ノワール監督陣これ全員観てるでしょ(そりゃそう)。新世界の「選挙モノ」の要素は本作が元ネタかな。ロクとディーの後部座席でのいちゃいちゃは「チョンチョンとジュングはこうならんかったんか〜!!」って暴れたけど、結末から見るに、ジュングは同じ思春期キャラでも、ディーより現実が見えてるタイプだったってことなんですね。
レンゲ食べるとこってもしかしてアシュラのコップ食べるところでオマージュされてたんですかね?食器をガリガリ食べるあの嫌な感じ、たしかに発明...
maya

maya