みりお

スワンソングのみりおのレビュー・感想・評価

スワンソング(2021年製作の映画)
4.8
試写会にて鑑賞🌟

本当に本当に素晴らしい作品で、105分のうちたぶん半分くらい泣いてて、それくらい心に響いた作品だったけど、その感動をどうしてもうまく言葉にできなくて、エンドロールを観ながら悩んでました💦
でもトークイベントに向けてポスターが設置されて…目からウロコ👀
「それでも人生は素晴らしい」
もうね、この一言に尽きる✨
(映画のコピーって本当にすごい✨)

かつて街中の金持ちがこぞって指名したヘアメイクドレッサーのミスター・パット。
煌びやかな服と帽子と宝飾品に身を包み、街で彼を知らない人はいないほどの人気者。
けれど時代を作った彼もいつしか年老い、老人ホームの片隅で、かつてヘアサロンで畳んでいたタオルを真似て、ひたすらナプキンを畳むのみ。
そんな彼に、街一番の名士であり、かつての太客であるリタの死化粧の依頼が舞い込むところから、このストーリーは始まる。

人生を重ねていくと、誇れるキャリアやスキルは付いてくるのかもしれない。
でも必ずや名声は廃れ、後進に時代を譲らなければいけないときがくる。
そして名声に固執していた人ほど、それを失ったときに、自分には何も残っていないように感じるのだろう。
年老いて鋏を置き、愛した人も先に逝ってしまって、小さな街で"すごい人だけど変人"と言われ続けたゲイの老人には、確かに何も残っていないように見えた。
長いこと鋏を持っていないため、かつて固執していた名声ですら、自分を置き去ったように感じる日々…
そんな中で急遽舞い込んだ、街中の人が参列するお葬式の死化粧。

誰だって怖いだろう。
「自分にはもう何もない。老いて死ぬのを待つだけ」と思っていた身には、その重責は重すぎる。
パットは、葬式会場に向かっては逃げ出してみたり、メイク道具を集めてはそれを道端に捨ててみたり…
何度も何度も行ったり来たりしながら、自分の人生をもう一度歩むかのような体験をしていく。
愛した人との辛く悲しい別れから、一度も訪れることのできなかった墓石で彼が見たものとは…
若いヘアメイクドレッサーに乗り換えたことを恨んで突き放した友人が、彼に遺した言葉とは…

たくさんの捨ててきたものや、憎んで突き放したもの。
それらと向き合わざるを得ない時間を過ごし、孤独な老人が得た「それでも素晴らしい人生」とは…
それを知ったとき、パットの生き様に涙が止まらない。

近年稀に見る名作だと思います。
人生に悔いが一つでもある人は、一度は観てほしい名作だなと思いました✨


【ストーリー】

アメリカ・オハイオ州サンダスキーの老人ホーム。
ヘアメイクドレッサーの仕事を引退し余生を送る“ミスター・パット”ことパトリック・ピッツェンバーガー(ウド・キア)は、「死化粧はパットに頼んでほしい」と思わぬ依頼を受ける。
それはかつての顧客で、町の名士だったリタ・パーカー・スローン(リンダ・エヴァンス)が遺言でのこした依頼だった。


【キャスト・スタッフ】

*監督:トッド・スティーブンス

アメリカオハイオ州サンダスキー出身🇺🇸
自身が若い頃に経験した田舎町でのゲイ体験を映画化し、オハイオ州三部作として評価されている✨
1998年の『Edge of Seventeen』で脚本と製作を担当し、2001年の『Gypsy 83』で監督デビューし、かつ脚本と製作も担当🌟
2006年の『Another Gay Movies』でも脚本・製作・監督を担当している✨
これらの作品すべてが、数多くの映画祭で賞に輝いています。、


*ミスター・パット:ウド・キア

ドイツ出身🇩🇪
18歳のときにイギリスに移住し、そこで演技の授業を受けたことがきっかけで、1966年に端役で映画デビューを果たす🌟
『悪魔のはらわた』(1973)のフランケンシュタイン役で一躍有名になったことから、ホラー作品への出演や悪役を演じることが多いそうですが、若い頃のウドは正統派超絶イケメン😍❤️
写真ずっと眺めてる💓笑
主な出演作は『ナルシスとプシュケ』『マイ・プライベート・アイダホ』『ハロウィン』『ソウル・キッチン』『アイアン・スカイ』など。
TVを含めると、実に150本以上の作品に出演しているそうです✨
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