よねっきー

アステロイド・シティのよねっきーのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
4.8
映像に見惚れるだけで至福の時間だった。観ようかなと思ってる人、スクリーンに対してどセンターの座席を予約してください。仲良し数人組で観に行こうと思ってる人、今回ばっかりはセンター縦並びで座席を予約してください。画面の中心線から数10cmでもズレてるだけであまりにも勿体ない。画面構成の美学を100%楽しめる場所で観てほしい。

『グランド・ブダペスト・ホテル』や『フレンチ・ディスパッチ』と同じく錯乱した語り口に加えて、いつもより若干フワッとしたテーマ性なのもあってか、早速Filmarksでは評価が割れてるみたい。それでも個人的には観やすくて楽しい映画だった。あまり難しく考えず、画面と展開に驚かされ続けるだけでも充分楽しいと思います。分かんなくていい。

過剰なまでに統制された画面との"良い距離感"をウェスが掴んできたように感じる。自分の作家性との付き合い方がどんどん上手くなってる。全編通してカメラの揺れをそこまで気にしなくなったのはナイスだった。緻密に計算されてるのに、映画にちゃんと即興的なグルーヴがある感じ。

そしてこいつの映画、やっぱりラストにかけて急にグッと掴まれる。突然舞台を退場するオーギーの独白が良かった。人生、「芝居がわからない」と我に帰るようなことばかりである。どうして火傷しちゃったのか。どうして妻を失っちゃったのか。それらが意味することは何か。この人生は何のメタファーなんだ? 多分答えのないそれらについて、あまり深く考える必要はないらしい。「分かんないままでいいから、物語を進めろ」と背中を押すシューベルトが優しい。やっぱり、この映画のことも分かろうとする必要なんかないんじゃないか。人生と同じで、勝手に進んじゃうんだからさ。ショー・マスト・ゴー・オンだ。
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