Smoky

ドーナツキングのSmokyのレビュー・感想・評価

ドーナツキング(2020年製作の映画)
3.8
エイジアン・アメリカン・ドリーム・ウィズ・ドーナツの物語であり、同時に、カンボジア難民の生活史でもある。
 
どんな大規模チェーン店でも、タダ同然の人件費を背景にした家族経営店には勝てない。そうやって塗り替えられた西海岸ドーナツ店の勢力図。
 
同じ共和党の大統領でありながら、難民を受け入れたフォード、その40年後に壁を作って拒絶したトランプ。この違いは、大統領のキャラ以上に、インドシナ半島を混乱させた贖罪と、内需拡大と安価な労働力を必要とした当時の米国の経済事情だと思う。ドーナツ市場だったから不問とされただけで、これが自動車や繊維といった重要産業の労働力に関わる問題だったら早い段階で潰されてたはず。あとは、モータリゼーションの恩恵など、さまざまな時の運が奇跡的に彼に味方したことによるサクセスストーリー。
 
難民キャンプからスタートして築き上げた帝国を、しょーもない理由で失う様は、ドーナツ版『スカーフェイス』という表現がぴったり。良家のお嬢様だった美しい妻にも苦労をかけ、最後には三行半を突きつけられるカンボジアのトニー・モンタナこと、テッド・ノイ。やっぱり「育ち」って大きいのよねぇ。
 
リドリー・スコットが、なぜ本作の制作総指揮を執ったのは謎だが(英国人の彼が大のドーナツ好き…なわけでもあるまい)、スイートだけどビターな興味深い物語であることは間違いない。
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