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死刑にいたる病のSSDDのレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
4.3
■概要
ある男は街でパン屋を営む、気の良さそうな男だった。
しかし男はどこにでもいる男ではなく、連続殺人犯であった。死刑判決を受け不服は一つあった。
ある日男は過去店に来ていた青年に手紙を出し、男は一件の殺人だけは冤罪でありそれを突き止めてほしいと青年に言う…。

■感想(ネタバレなし)
いつも通りの時間にいつも通りの行動。判を押したような行動というようにパン屋の男の日常が語られ始めるが、常人とは異なるルーチンがさらりと入り込む。
不穏でかなりゴアよりなプロットから開始される。
流石孤狼の血の監督、容赦なく残酷描写がある。

阿部サダヲの死んだ目の演技が恐ろしく、怪異と化したかのような魅力でサイコな殺人犯を怪演しています。

どうしても主人公の青年がボソボソとしゃべるので聞き取れなくて困る場面はあるものの、最近の邦画はこの方向性の話は出来がいいものが多い。

原作を未読なので所々謎はありますが、なかなか秀逸でした。











■感想(ネタバレあり)
拷問描写が結構さらりと出てきて驚きましたが、淡々と犯人の中で必要行為で生活の一部と化しているということの描写から引き込まれる。好奇心やどういった人間性なのか、もう顔白いサダヲが俊雄くんにしか見えなくて怖い。

典型的な秩序型殺人鬼という古くから映画で出てくるFBIプロファイル通りの、サイコパス、高知能、幼少期に虐待、周囲から慕われる人間を今創り出すのもなかなか新鮮でした。

そもそも典型的サイコパスである前提となるとこの話自体が何もかも犯人の独白に踊らされる人々を描いており、逮捕された慢心という理由も本当か否かすらわからない。

主人公が思う真実で冤罪ではなかったとしたが、本当に殺したか否かも重要ではなく、主人公がこの男の領域に踏み込むか否かが犯人にとって重要だったということ。

映画では非協力的に見える弁護人も原作では犯人に懐柔し飼い慣らされてるコマだそうで、最後の恋人になる女の子も突然過ぎて理解できなかったが諸々手引きするのは弁護人ということ。

ラストシーンでの恋人か主人公。
いずれがあちら側(殺人者)になるか、つまり"死刑にいたる病は伝染するのか?"というラストは好みなのですが、もう少し唐突感がないように伏線や埋めて欲しい空白は多かった。

それでも虐待を共通とした一連の犯人と接点を持つ人々の話を掘り出していく進み方は楽しめました。

凡人である青年が連続殺人犯の息子かもしれないとなると思考、行動が変わるというのは間違いないでしょうね。自身に現代科学ではまだ立証されてないなんらかの先天的な異常な素質が引き継がれているのではないかと苦悩し、その思考から何か試してみてしまうのは人としてあり得るだろうなと。

人は産まれた時から優劣を付ける優生思想主義は良くはないと思いますが、劣勢学が高度になればなにか要因を排除することはできるのかなといつも思います。

性善説、環境が人を決めるのか、まだ人間の心理はわからないことばかりですね。
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