市川右太衛門さんの得意とする役どころは、やはり天下無双、豪華な衣装を纏いながらも、女性より趣味を優先し、権力に対抗する人情家。

今回の役どころは残念ながら、全てが中途半端で不完全燃焼。爽快さに欠く。

武芸者の右太さんを慕う男四人に女三人。
典型的な東映時代劇。別に監督は中川信夫でなくてもいいが、けっこう楽しめた。
近衛十四郎の扱いが中途半端なのが勿体ない。

「金語樓のむすめ物語」1940年 東宝〜吉本
3人の娘には、夫婦仲よく、と諭すが、いざ自分が再婚するやいなや夫婦喧嘩をおっ始める、金語樓と清川虹子の喧嘩はもはやシュール　笑

「稲妻峠の決斗」
中川信夫の時代劇。右太衛門が槍の使い手で、いちいち槍でポーズをとる。退屈男の見栄を切る軽薄な演技は殆どみられないのはよろしい。あの「プハッ」で右太衛門は好きになれないのだ。その右太衛門を師匠として集まって来る若者たち。彼との決斗を待つ近衛。彼を見守る月形、高田浩吉、黒川らの存在感。そして悪役の進藤は、本当に悪い奴だが、進藤だから、どこか憎めないところがある。むしろ手下の方が冷血漢。殺陣もよろしい。セットの美術も活かしたカメラの動き。助監督は長谷川安人。本作の後、同年（62年）に「片目水月の剣」で監督デビューしている。

「金語楼のむすめ物語」
タイトル登録がないので、ここに記す。
中川信夫監督の金語楼主演の喜劇。金語楼の吉本在籍中の作品。中川はエノケン主演の喜劇ではエノケンをよく動かして、サラリーマンの、相撲取り、ファンタジーなどの傑作にしたが、金語楼は落語家で、本作でも動かない。表情演技とセリフ回しを長廻しで見せてくれる。しかしエノケン映画のような面白さはないし、話の展開も先が読める。金語楼は斎藤寅二郎監督と多く組んでいるが、「水戸黄門」は相方が笑わせてくれるし、寅二郎監督のシュールなギャグに負うところが大きい。そういえば、成瀬巳喜男「愉しき哉人生」の金語楼は不思議な役柄で、金語楼映画は最高作だと思う。本作は中川らしさがうかがえない残念な作品。

「金さん捕物帖 謎の人形師」
これもタイトル登録がないので、ここに記す。シリーズ2作目だが、1作目は未見。御用金連続強奪事件を金四郎が調べるのが話の柱だが、強奪シーンはない。人形師甚五郎が金四郎と瓜二つという強引な二役。そして八千草薫が可愛いのだが、浜田百合子もなかなか魅力的。芝居小屋、だるま落としの標的など、あまり意味がないし、進展もスローで、終盤で突然悪人はお縄について、金四郎の取調べ。人形師は謎ではないし、謎解き、ミステリーの面白さはない。古関裕而の音楽も効果なし。あまり褒めるところのない中川作品。