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ある男のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

タイトルが出るまでの開始わずか30秒。この映画は面白いと直感した。原作、脚本、監督、キャスト。この作品を作り上げている方々の名前を見るだけでハズレのはずがないだろうと思っていたのだが、その期待を裏切らない素晴らしい作品だったように思う。

名前とは不思議なもので、人々に一生付き纏う。しかし、名前それ自体はその人がそうであるということを証明するには不十分であり、実態を掴む材料としては物足りない。一方で名前はその人を別人に仕立て上げられるほどの力も持つ。あるいは人々はそれほどまでに名前というものを信用しきっている。名前はある意味でその人の肩書きであり、人々は得手してその人を肩書きによって括り、そういうものだと勝手にその人の生い立ちや人となりを決めつけるのである。

自分らしくあれと謳われてきた2010年代後半に対して、自分らしさとは何なのかを問い始めた2020年代。自分は何者なのか。自分の存在はどうすれば証明することができるのか。本作はそのような問いを投げかけていたように感じる。

久しぶりに朝早くから映画を観ることに些か逡巡していたのだが、こういう出会いがあるなら、早起き大歓迎。次なる良作との出会いを求めて、また映画館に足を運びたい。
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