このレビューはネタバレを含みます
名を変えて違う人生を歩みたい男たち。
戸籍交換にもブローカーがいるのだね。
二重三重に交換して、本当の自分を消し去る。
男（窪田正孝）は戸籍交換をして谷口大祐になった。そうしてある時出会った里枝（安藤サクラ）と結婚する。
もちろん、
戸籍交換のことは話さない。
秘密だ。
戸籍の交換と同じように記憶も消し去れたらいいのに、そうもいかない。血は確かに自分の中に流れてる。
大祐は自分を偽って生きているけれど、誰かにとっては大事な人なのだ。だって、名前を変えたからといって人間性までコロッと変わっちまうことはないもの。彼はごく普通の善良な人間なんだもの。
不慮の死をきっかけに大祐がひた隠しにしていた過去が次々に暴かれていく。この展開には、本人不在をいいことにヒソヒソと噂話をされるような、そんな居心地の悪さを覚えた。
図らずも大祐の秘密を暴いていくことになる弁護士の城戸（妻夫木聡）も自分の出自に煮えきれない何かを持っている。
城戸が大祐を暴いていく過程で、城戸も自分の出自に嫌でも向き合わざるを得なくなる。穏やかに見えた城戸が一度だけ激昂する瞬間は、自分ではどうにもならないものに対するやるせなさだったり、アイデンティティとして持っていたものを茶化された憤りなんかもあったのかなぁ。
妻夫木くん、窪田くんの静かな演技は良かったな。柄本明さんは見飽きちゃった感はあるけれど。
中でも小籔千豊の自然な演技はが良かった。終盤の「ずんだ餅食べる〜？」という台詞には、思わず「食べる食べる〜！食べた〜い！」と返しそうになったもの。
