みかんぼうや

さがすのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
3.9
【ポン・ジュノ監督の助監督を務めていたという片山監督の経歴に納得!クライム×ヒューマンドラマと思いきや、しっかり和風エンタメサスペンスだった良作】

うわ!この作品は、色々な意味で期待を裏切られた・・・前半どうしようかと思いながら観ていましたが、逆に後半はいい意味の裏切りで、結果的にかなり面白い作品でした。

少し細かいところに踏み込むと何を書いてもネタバレになりそうな作品なので、極力中身には触れませんが、私、予告だけ観た時は、勝手に“娘が父を探す親子愛を絡めたサスペンス&ヒューマンドラマ”だと思っていたのですよね。いや、確かに“親子愛”は要素としてあるのですが、もっとヒューマンドラマ軸で淡々とシリアスに描かれるものだと思っていました。

そんな期待値で観ていた前半1時間。これがなかなかの“期待外れ”。いや、決してつまらないというわけではないのですが、出てくる大人たち(子どもを面倒にかわす警官、怪しい聖母様、極めつけは変態エロビデオマニアの爺さん)に違和感を感じてしまったり、不必要に女性を脱がせて裸を出そうとする作風に(“猟奇性”を表現したかったのでしょうが、それでもジャージをめくるシーンとかも含め不必要なシーンが多かったと思っています)、正直「単純に“気持ち悪い作品”だな」と思って期待していた分、かなりガックリしていました。

そして後半に入り、妻とのくだりあたりで、ようやく重めのヒューマンドラマ本腰か!?と思ったところからの、急激なエンタメクライムサスペンスへの展開!え、なにこれ!?これまた、全く予想外の“ノリ”なのですが・・・しかし、解き明かされる様々な背景も含め、テンポよくエンタメ色濃い絶妙な展開で面白い!ラストの締めもバッチリで、後半だけなら余裕で4点代。

前半1時間で悪い方向に裏切られ、後半1時間で良い方向に裏切られ・・・しかし、トータルで見るとやはり後半の展開が際立ち、総じてとても面白いエンタメ映画だった、にしっかり着地しました。しかし、これから卓球のラリー見るたびにこの作品のことを思い出しそう。

この作品の全体の陰鬱とした雰囲気の中にガッツリエンタメ感が練り込まれている感じが、ポン・ジュノ監督の作品的なのですが、それもそのはず。監督の片山監督はポン・ジュノ監督の助監督をされていたようで。片山監督の作品は本作しか観たことありませんが、これだけ観ると、物凄く色濃く影響を受けているな~、と思わずにはいられません。よく考えたらオープニングの佐藤二郎のスローモーションの怪しい動きは、ポン・ジュノ監督の「母なる証明」のオマージュか?と思うくらい使い方も含めて酷似してるし。

片山監督の「岬の兄弟」もずっとU-NEXTのマイリストに入れたまま観ていませんでしたが、本作を観たことで、俄然優先順位が上がりました。

しかし、TVで予告を観たときから気になり、映画館で観てみようかな、なんて思っていたら、もうアマプラで見放題・・・昔はTSUTAYAで新作借りる時は1泊2日で旧作より高くて慌てて観たものですが(それもいい思い出だけど)。本当に便利な時代になりました。
みかんぼうや

みかんぼうや