このレビューはネタバレを含みます
面白かった。とても見応えのある人間ドラマ。
初めてこの監督さんの作品を見ましたが岬の兄妹の方でしたか。見ないと！
細かい演出、演技、この親子の空気感から育ち方まで画面から伝わってきて胸を締め付けられるような感覚。
特にラストの卓球のシーンはすっごく良かったです。
物語を動かす役を演じたのは、佐藤二郎、清水尋也、伊東蒼、素晴らしいですね。
前編
楓が、失踪した父親を探す。
偽善的でも力になってくれる先生や、嫌なシスター、自分に惚れてるクラスメイトなど、短い時間の中に人物描写が詰まっています。たまにクスッと笑えるような場面も。
そんじょそこらの娘より強い子だと思うけど、父が居なくなった寂しさや必死さが、痛々しく健気です。
犯人が閉じた卓球教室にいたことで事件は大きく動く。ケータイを拾ったことがラストに繋がるのか。
中編
山内の異常性、これには本当にゾッとした。気持ち悪かったです。
また何が腹立たしいって、自分のやってることは快楽の手段でしかないのに正当化しているっていう嫌悪感爆上がりの人物描写。
それでも、ビールを準備していたところを見ても、ムクドリと同じように智に、少しでも信頼する心があったのだろうか。
あと、みかんのおじいちゃん、なんであんなにAV持ってんの、気持ち悪…
後編
智のターン。
愛する妻がALSに。
献身的に介護をするも妻は楽になりたい、死を希望するほど追い詰められている。
自殺志願者の本心かそうじゃないかってのも劇中で示唆されていた。
体が日に日に動かなくなる妻が、望んで、自殺未遂して、死にたいと伝えてくる。
本心かどうかも大事だろうが、その気持ちを無碍にできる人とできない人は確実にいる。
楽にしてやりたい。辛そうな妻を見ていられない。その葛藤。
佐藤二郎が名演でした。
山内と手を組む流れ、裏切り、逆襲。
ラスト、事件が終わったかのように見えたと思ったら。
楓はまだ追っている、智を明らかにするために。
また、ミイラ取りがミイラになるかの如く、この“仕事”に囚われている。
（智に性的欲求はないからミイラとりとは違うかもしれんが、殺人を行った人ってのは決定的に、しなかった時には戻れないという意味を込めて。）
妻を救いたかった気持ちが根本にあることが切ないですね。
そこを娘に見透かされることが救いだったかな。
ようやく父を探し出せた楓、頑張りました。
おばちゃん褒めてあげたい！（年齢的にも親目線で見ちゃうもんだから…）
