いの

幻滅のいののレビュー・感想・評価

幻滅(2021年製作の映画)
3.6
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グザヴィエ・ドラン出演作ということでどうしても観たかった映画。観ている途中で思い出したけど、ドラン監督じゃないドラン出演作で私がハマったものは数少ない💦そのなかでもこの映画はなかなか良い方だと思う。出てきた瞬間は、「わたしはロランス」での彼の登場シーンを少しだけ思い起こさせてくれたし、出演時間も短くはなかった。というか、ラストまでみてわたしはようやくドランが今作で担った役割の大きさに気づいた次第。とても良い役だったと思う。バルザック原作作品に出演したかった思いも想像してみた。


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映画のなかではっきりとした年代が提示されないとき、この映画の設定年代はいつだろうかと推測してみることが私は好きです。観ながら1800年代半ばだろうと推測したけど(輪転機、小新聞など)、私の推測は全く外れてました。これだから世界史は難しい(←でもこれから頑張って勉強する!)

1820年代のフランス
王党派vs.自由派
新聞、小説、演劇
貴族社会


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詩人として成功したい青年がパリにやってきたら、そこは享楽的で刹那的な世界で、だまし合いや貶め合いは標準装備。貴族社会の仲間入りをしたいけど、いくら母方が貴族の出だからといったって、田舎もんの薬屋の息子にはそれは困難極まりないこと。嘘やでっち上げ、ハッタリが当たり前のマスコミ&カルチャーの様相は、過去の産物とはとても思えなくて、まるで現在を皮肉っているかのよう。フェイクニュースとかステマとかが当たり前の世界で、浮き沈みのその乱高下ぶりが凄まじい。正気を保っていられるかってそりゃ無理でしょ


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怒濤のナレは、もしかしたらバルザックの小説を一部読み上げていたのかも。私の耳にフラ語は気持ちよく入ってくる。wikiに「オノレ・ド・バルザック」の「ド」は〝貴族を気取った自称〟と記されていた。貴族の名を名乗りたい主人公に、バルザックはどこか自身を諧謔的に反映させたのかもしれない。


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主人公を演じたバンジャマン・ヴォワザンは、『デュエリスト』に出演してた頃のキース・キャラダインを彷彿とさせる。/主人公の指南役となるヴァンサン・ラコストは『アマンダと僕』での主役を演じた方でやっぱり観る者を惹きつける魅力がある。/主人公が最初に恋してしまうその役を演じたのはセシル・ドゥ・フランス。『少年と自転車』のサマンサ。/赤いストッキングが印象的だったサロメ・ドゥワルスのこれからの活躍を楽しみにしていきたい。



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