いやー怖かった。中絶が違法だった頃のフランスで妊娠した女学生の苦悩を描いてて、終盤で思わず目を背けたくなるシーンがある。女性に中絶の権利が無いことが、いかに女性に負担を強いるかということを突きつけてくる作品で、こないだのアメリカ最高裁の中絶に関する司法判断を思い出す。女学生が人知れず中絶しようとする話は「17歳の瞳に映る世界」があったね。
学業優秀な大学生のアンヌが密かに妊娠してて、最初の診察で「性経験が無い」って言うのがキリスト教のマリア様の話か何かかな？と一瞬混乱したんだけど、これは単に彼女が嘘ついてたんだね。あと、てっきり現代の話かと思ってたら、中絶が違法っていう説明が出てきて初めて1960年代が舞台だと知った。アンヌが勉学を続けるために何とか胎児を処置しようと奔走するも時間ばかりが無慈悲に過ぎて行き、次第に追い詰められていくサスペンス感が怖い。
男達が無責任なんだけど、アンヌもアンヌでまあ言ってみれば尻軽なんだよね。医者が頼りにならないのでアンヌが自分で何とかしようとするシーンが「スワロウ」みたいな痛々しさで、見ちゃおれなかった。ラストのトイレの展開も同作と似てたね。
