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ベルファストのkassyのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
3.6
試写会にて。

ケネス・ブラナーが幼少期を過ごした、アイルランドのベルファストという街を舞台にした半自伝的映画。

この映画を見て感じたのは、この映画は人を描いているようで、街を描いているのだということ。この映画で強く印象に残るのは、全て知り合い、みんなが街の人を知っていて、みんなが子供たちを見守っている。そんな古き良き相互扶助のようなあたたかい街の人々と、喧騒である。会話はザワザワと入り乱れ、そんな心地よい喧騒の中を、バディは明るく縦横無尽に楽しんでいく。

しかし、時代の変化が街に影響を及ぼしそんな街にいられなくなってしまう。大好きな街への憧憬、離れる切なさ。
ケネス・ブラナーが頭の中の思い出を、映画として記録出来たという意味で、とても幸福な作品なのだと強く感じた。
おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、お兄ちゃん・・そんな家族のアルバムを見させていただいたような感覚である。

戦いによって故郷を離れなければいけないつらさ、移民の胸中が語られ、今の時世と重ね合わせてその虚しさを感じてしまう。

ただ、バディはあくまでも明るく、その明るさに救われる思いだった。
大好きな街の、大好きなあの頃。ケネス・ブラナーにとって大切な宝物であることが窺い知れる作品である。
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