masaya

ベルファストのmasayaのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.3
宗派対立激化でバリケードの街となったベルファスト。高い失業率と悪化する治安の中でも、人びとは家族を守り隣人と助け合い、少年は生まれ育った街で伸びやかに生きる。去った人も、残った人もこの街を愛した。故郷ある者なら誰しも琴線に触れる、いつか帰る場所についての物語。
貧しくて危険で、世界から見捨てられたような小さな街も、少年には家族やご近所や友達と過ごした掛け替えのないホームだ。その事実は、何処に行っても、何をしていても、他人から何を言われても揺るがない。彼は生涯「ベルファスト15のバディ」おじいちゃんおばあちゃんの孫でパパ、ママの息子だ。
両親がバディ少年に優しくて、時々厳しくて何より子供を守る為にどこまでも勇敢だった。理想化されてるかも知れないけどこれだけ厳しい情勢下でバディ(ブラナー監督の投影?)が幸福な少年時代を送ったことは、両親の在り方に拠る所が大きいだろう。というかこの子の親は命いくつあっても足りないよ!

舞台となった1969年は象徴的な年なので、TVに映るアポロ宇宙船や映画館の「チキ・チキ・バン・バン」など誰もが知る事物がベルファストと世界の中心との距離を実感させる。本編が白黒なのに当時の映像や文化作品がカラーなのも、近くて遠いその距離感を示していたのかな。
masaya

masaya