misty

世界で一番美しい少年のmistyのレビュー・感想・評価

世界で一番美しい少年(2021年製作の映画)
4.0
ひとりの少年を、子供を神格化して祭り上げることのあまりの残酷さ。
巨匠に見初められ、世界で一番美しいと呼ばれた彼は天使である前にひとりの人間で、何より庇護されるべき子供だった。
荒波に押し流されていく彼を助けてあげたかった、そう思うことすら大人の傲慢だった。

『ベニスに死す』でのオーディションやオフショット映像は貴重なものでもあるものの、オーディションで服を脱ぐよう言われた時の彼の戸惑いや、下着一枚で写真を撮られる彼は痛々しくてただ悲しい。
巨匠なら、その追い求める芸術のためなら子供に何をしてもいいのか、そんな権利はどこに存在するのか。

日本でのパートが特にグロかった。来日時の狂乱もさることながら、当時を知る人間たちが彼も同席する中であの頃のことを嬉々として語るその様が気持ち悪くて仕方がなかった。そうやってあなた方は当時もそんな顔で彼を搾取したんですね。相当グロテスクに編集されてるからざまあみろよって感じです。

もうこの映画を観てしまったら『ベニスに死す』もまっさらな気持ちでは二度と観れないし、推しを神格化して同じ人間として見ないことがいかに気持ち悪くて逆にどれだけ推しを踏みにじっていることなのか身につまされてひたすらにしんどかった。
三次元の推しは自分と同じ人間であるということを心得よ。

だけどかつて『ベニスに死す』でそんなことがあったこと、苦しんだこと、ただ搾取されたことをアンドレセン本人が語り、それを映画にして、誰しもの目に触れられるようにしたということには意義があるものと信じたい。それからの彼の人生のことも明かしてくれたということにも。

なおヴィスコンティについては「ハ?!何このオッサンキッッッッッッモ!!!!!!!」以外のボキャブラリーがなくなりました
ヴィスコンティは何も詳しくないがこの人が撮った映画はどんな傑作と謳われようともう観たくない
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