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ちょっと思い出しただけのcottonのネタバレレビュー・内容・結末

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます



タイトル通り、2人がふと何かを思い出すかのように物語は過去に遡っていく。

タクシードライバーの仕事について聞かれた葉が「いつもどこかに行きたいけど、どこに行ったらいいか分からないじゃないですか。だけどこの仕事で、お客さんに行き先を決めてもらって、そのどこかに連れて行ってもらっている気がする」のように答えるあの台詞が良い。ひょんなことから別れも、出会いも簡単にくる。

「何でここでバイトしてるの」「自由だけど自由がない感じが好き、あと魚も」2人だけの世界で流れるあの空気と会話、楽しげなシーンであんなに自然とニコニコしたのは初めてかも。デートに勝手に使ったタクシー、あの場所に隠れている煙草。「あなた映画スターにならない?」「私には整備工になるっていう夢があるの」


度々登場する色んなケーキ、ソファで2人映画を観ながらつつくシーン。大きな口を開けて、少し気怠く口に運ぶのが印象的。こんな事あまりないのに、無性にケーキを買って帰りたくなった。

2人が出会った夜、長回しの高円寺。
シャッターの閉まった商店街で踊る姿が本当に自然で、誰もが過去の、恋に落ちた瞬間と重ねてしまいそう。


感情が溢れ出す葉と反対に、どう想っているのかあまり表に出さない照生。「こんなに仲良くなってしまって、伝えたら壊れちゃうんじゃないかって」タクシーでの告白、映画みたいな映画のシーン。正反対の2人の行動に同じ気持ちが溢れる愛おしい車内。


タクシーを見かける度、運転席に目をやらなくなったであろう照生が誕生日の夜久しぶりにあの映画を観ながら、明日食べる用のケーキを買った仕事終わりベランダで明け方の空を眺めながら、ちょっと思い出しただけ。

「さっきの話」をリピートしながら帰る。
まだまだ好きになれる曲があった、これしか聴きたくないの帰り道が結構好きだ。
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