Smoky

ジェームズ・ボンドとしてのSmokyのレビュー・感想・評価

ジェームズ・ボンドとして(2021年製作の映画)
3.9
おそらく『ノー・タイム・トゥ・ダイ』パッケージ化の特典映像に入れるために制作されたであろうドキュメント。ダニエル・クレイグの6代目襲名披露時の騒動から惜しまれつつ引退するまでの、涙あり笑いあり怪我ありの大逆転サクセスストーリーは、既知のものが多いけれど、舞台裏の映像と合わせて見直すとやはり感慨深い。

以前どこかで書いた覚えがあるのだけれど、ジャック・バウアーの登場に端を発する”競合"諜報員の乱立や変化は、ボンド映画に少なからず影響を与えたと思う。イーサン・ハントは頭脳ではなく肉体を酷使して働くようになり、気づけばジャック・ライアンは分析官からエージェントに転職しており、ジェイソン・ボーンは…相変わらず記憶を無くして右往左往している。

追い討ちをかけるように、アメコミものが大量制作されるようになり、諜報員という職業は、男性諸氏の(粗野で幼稚な)ファンタジーの世界からも追放された。諜報員の誰もが「現場労働者」となり「マルチタスク」で事件を解決する時代にあって、酒を飲み、ジョークを飛ばし、女性を口説き、秘密兵器に頼って事件を解決する諜報員の需要など皆無に等しかった。

そんな時代にリブートされたボンド映画は『物語の力』で生き残ろうとした。そのためのダニエル・クレイグや、アカデミー賞受賞クラスの脚本家&監督の起用であり、旧来の意味でのボンドガールを登場させず、Mまで殉職させるほど、既存のボンド映画の枠組みを壊し連続する一つの物語としてひっぱてきた。『スペクター』で感じた「ネタ切れ感」を、大好きな監督であるキャリー・フクナガはどう修復させるのか?…が楽しみ(…というか、次のボンドは彼が演ればいいと思っている)。

撮影現場で、記者会見の場で、プレミア会場で、ずっとダニエル・クレイグの側に居て彼を見守り続けてきたバーバラ・ブロッコリこそが「リアルのM」だったんだな…と(笑)
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