hoteltokyo

入り江の殺人のhoteltokyoのレビュー・感想・評価

入り江の殺人(2020年製作の映画)
4.0
カナダ東部の大西洋に面する州ノバスコシア州アカディア。この静かで色褪せた沿岸沿いの港町で失踪事件が起きる。警察は殺人事件と断定し、ある1人の容疑者を拘束する。それは地元では笑顔を絶やさない気さくな漁師だった。この地域では良質なロブスターが採れることで有名で、メディアはこのロブスターを巡って起きた事件だと騒ぎ立てる。多くの人間が口を閉ざすこの事件、真相が解明されるにつれて美しい港町にある、田舎特有の閉鎖的な人間関係があらわになっていく・・・という実際の事件を基にしたドキュメンタリー。

失踪したフィリップは学歴がなく、地元の漁師に密猟したロブスターを安く売りさばくことで生計を立てていた。ここまで聞くと忌み嫌われてもおかしくない被害者ではあるが、取材を続けていく上でフィリップの家族や友人の証言から今まで見えてこなかった側面が現れるようになる。

日本から遠く離れた異国にある田舎の港町というだけで背筋がゾクッとするのだが、都会と比べると、こういった静かな場所のほうが、複雑さを抱えて人は生きているよね。消えたフィリップはどこへ行ったのか?生きているのか?容疑者として捕まった漁師は何を知っているのか?ほんのりと潮の香りを漂わせ仄暗い水のそこから真実が見えてくる良質なドキュメンタリーであった。
hoteltokyo

hoteltokyo