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よだかの片想いのmmmのレビュー・感想・評価

よだかの片想い(2022年製作の映画)
4.0
原作は島本理生氏の同名小説・未読

顔の左側に大きな痣があるアイコ(松井玲奈)
心許せる学校の先輩や後輩、担当教官など
学生生活は穏やかに過ごしているが、
恋にはどこか消極的になっている。

とあるきっかけで、ルポ本に自叙伝的エッセイを
寄稿することになり、それを機に知り合った
映画監督の飛坂(中島歩)に
エッセイの映画化を打診される。
彼の丁寧な言葉にアイコの心が動きはじめる。

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淡く静かな雰囲気ながら、顔をアップにしたカットや
フレアを取り入れるなど光を意識した映像も
アイコの心情を表すようでもあり、カメラが彼女を
見守っているような感じもして、とても印象的でした。

仮に痣でなくても、コンプレックスというのは
なんらか抱えてる人が多いのではないかと
(勝手に)思っていて…
時として、それはアイデンティティにもなるし
ネガティブな要素だけじゃないのだけど、
恋というのは、やっぱり相手によく見られたいと
思ってしまうからちょっと厄介。

飛坂さん、痣のことは気にしていないのだろうけど
マイペースだし、ちょっと言葉足らずで心配になるだろうね。

気持ちがすれ違うと不安になるし、
不安になるとコンプレックスが必要以上に
気になってしまったり…
気持ちが離れてしまうのではないかと思うと焦るし
焦った時の言動は、だいたい良い方向に働かない。

そんな葛藤が伝わってきて、疑似的に
「あぁ、これはしんどい」と思いながらみてました。

立場変わればなこともあったりして
どちらかが足りないと、どちらかは過剰になったり
相手に傷つけられたと思ってたら、
実は自分も誰かを傷つけていたり
良かれと思ったことが、実はそうではなかったり

細やかなことだけど、そんなことが丁寧に描かれてました。

原作とは異なる部分もあるそうですが、
終盤の展開や先輩の言葉がとても軽やかで、
日に日に沁みている感じ。
相手も大切だけど、自分も大切。

安川監督は短編しかみたことがなかったけど、
「ミューズ」(21世紀の女の子)や
「行き止まりの人々」(蒲田前奏曲)を含め、
解放ということを大切にされている気がする。

城定監督の脚本の守備範囲の広さもびっくり!

松井さんの作品に対する思いの強さが伝わってきたし
中島さんの絶妙な曖昧さ
あれは、みんな参ってしまうのでは…

分かっていたけど、色々ハッとさせられました。
公開は9/16(金)からです。
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