缶バッジ

犬神家の一族 4Kデジタル修復版の缶バッジのレビュー・感想・評価

5.0
完璧という言葉が相応しい映画。

冒頭3分のアバンタイトルからタイトルとともに流れるテーマ曲、そしてオープニングクレジットのあのタイポグラフィと、掴みから100点満点。
物語が始まった、一番最初のセリフがいきなり「お父様、ご遺言は?」なんて、否が応でもどういうことが起きてるんだろうと引き込まれてしまう上手い作り方じゃない。で、その後すぐに無言で映し出される島田陽子の美しさよ。

後年、市川崑監督のセルフリメイク版が出されたけど、まあいろいろ違いはあれど最大のポイントの一つが『珠代』だと思っている。松嶋菜々子が美人じゃないなんて言わないけれど、嶋田珠代のあの“儚い美しさ”を見てしまうと大人と子供ぐらいの違いがある。そう、この映画は島田陽子を観るための映画と言ってもいいような作品なのだ。もちろんその他の出演者全てが素晴らしい仕事をしているのだけれど。

視点を少しだけ変えると坂口良子がまた素晴らしい。オリジナルと較べるとリメイク版の深田恭子は坂口のコピー感が強すぎて残念。たぶん事前にオリジナル版を見ちゃったんだろうなあ。あの「食べなさい食べなさい」のシーンとか、演技の“鮮度”が比べものにならないもんな。だから付け加えると、この映画は島田陽子と坂口良子を観るための映画と言うのが正解なんだろう。

三國連太郎と岸田今日子の贅沢なワンポイントリリーフみたいな起用は実に勿体ない感じだけどインパクトは抜群で、岸田今日子の琴の先生なんて夢に出てきそうでコワい。あ、ちなみにお父様の三國連太郎は松子お姉様より実際には5つも若いんだよね。


七人の侍にも東京物語にもけして劣らない、日本映画の最高到達点だと個人的には思い込んでいる。
そんな名作と一緒にしちゃあ叱られそうだけど、本作の世界観を丸パクリした「リーガル・ハイ」の徳松醤油のハナシも大好きなのだ。
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