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ゴジラ-1.0/Cの缶バッジのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0/C(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

いくらフルトベングラーやルービンシュタインに敬意を表していたとしても、わざわざモノラルでベートーヴェンを録音しようと考える演奏家がいるんか?ってハナシでね。

初代ゴジラを彷彿させる世界観とか書いてあったけど、本気で勝負する気があったんならはじめっからモノクロ一本勝負を挑めば良かったと思うけど。いったんカラーを出したあとでなんて、まるで保険掛けてるみたいだよなと思ってみたり、たとえクリエイターサイドにその気があっても配給側が商業的観点からダメ出ししただろうとも思ってみたり。
そっか、ディレクターズカットみたいなものと考えればいいのか、って流れでカラー版はスルーしてこっちを見せていただきました。

物語の冒頭、大戸島守備隊に逃げ込んできた神木クンに「死んでこいなんて命令、律儀に守ったってこの戦争の結果はとうに見えてる」っていうセリフは違和感があり過ぎ。いやそりゃあ個人個人の腹の内はともかくよ、「進め一億火の玉だ」のこの時代さすがにあれはない。ましてや基地内で、軍人どうしの会話ならなおのこと。
駆逐作戦前の吉岡秀隆の「今度の戦いは死ぬための戦いじゃない」とかぬかすシーンもちょっと青臭すぎた。でもああいうのが現代風なんだろうな。

神木クン、キラりと光るシーンも少なからずあった気がしないでもないけど、「ん?」と思わずにいられないシーンがチラホラあったのは彼自身のせいか、演技指導がヘンなのか。全般的に芝居が過ぎるような感じで、前半だけで「神木クンはもういいよ、お腹いっぱい」となってしまった。

共演の浜辺美波はモノクロ映えしたねぇ。
カラー版と比較したわけじゃないけどモノクロの方が合ってるような気がするし、芝居自体も過不足ない感じで好感がもてました。ちょっと薬師丸ひろ子みたいで、そのまま鈴木オートで堤真一の奥さんになってもハマりそうな…。

有楽町にゴジラ出現の電車の急停車、あれだけは絶対無理よ。ビターっ‼て止まったの何なん。制動距離短すぎるって。それに続くシーンで、電車がゴジラに咥えられて『ミッション・インポッシブル/デッドレコニング』とまるで同じような構図になるところ、浜辺美波がポールにぶら下がったまま耐えてたのも、あれオトコでも無理です。いやもちろん、トム・クルーズは別としてね。
で、せっかくアクロバチックな助かり方をしたわずか3分後に、結局は死んじゃった?というやるせなさだったけど、あのタイミングの退場は完璧だったね。

蔵之介さん最後まで無駄に暑苦しかったけど、それを期待されてのキャスティングだろうからそういうものとして、彼のセリフ「小僧、戦争に行ってないってのは、とても幸せなことなんだぞ」は劇中で一番良かった。なのにそのあと「この国の未来は任せた」って言っちゃうんだよな。吉岡さんが「死ぬための戦いじゃないよ」って言ったばかりなのに、おバカさん!

終わり方に関してはサイコー!
浜辺美波実は生きてた…じゃなくて、ゴジラが実は…のほう。サイコサスペンスみたいなあのエンディングでスコアを0.5ポイント上乗せ。


最後の最後に賛否有りそうなモノクロ版の評価について、「とりあえずカラー版は見る必要を感じず」。
そもそもモノクロ版だからこそ活きたゴジラのテーマってこともあるだろうし。伊福部昭さん、素晴らしい音楽をありがとう。わだつみ作戦の場面で、まさかの元祖ゴジラのテーマは胸アツでございました。

おっと忘れてた、安藤サクラ。
彼女はまああんなもんです。あんなのぐらいでいちいち褒めたらむしろ彼女に失礼です。
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