イチロヲ

すべての些細な事柄のイチロヲのレビュー・感想・評価

すべての些細な事柄(1996年製作の映画)
4.0
1953年にフランスで設立されたメンタルクリニック「ラ・ボルド」をフィーチャーしている、ドキュメンタリー作品。精神疾患をもつ入所者たちに年に一度の「オペレッタ」を上演させるという、風変わりな治療法を実践している施設の出来事。

施設内は平和的なコミューンのため、大きな揉め事は起こらない。演劇の練習から本番までの準備段階が虚飾なしに収められており、演技をしない人間たちが演技の練習をする、という不思議な空気感に包まれる。

ねじれたサスペンダーを使い続ける人、ゲラゲラ笑いながらパセリ切りに没頭する人、ものすごいスロースペースで似顔絵を完成させようとする人、支離滅裂なことを穏やかに喋り続ける人、ひげ剃りを嫌がる人など、個性溢れる入所者たちが登場する。

オペレッタが上演されるくだりでは観客の顔をカメラで抜いておらず、終幕の会場の様子も出てこないため、大成功なのかどうか分からずじまい(台詞では大成功と言っているが)。根本敬・著「因果鉄道の旅」の、優しさに包まれたバージョンのような作品。
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