とらキチ

ダ・ヴィンチは誰に微笑むのとらキチのレビュー・感想・評価

ダ・ヴィンチは誰に微笑む(2021年製作の映画)
3.9
闇。
闇ですねー(苦笑)。もうホント闇しか浮かび上がってこない。
レオナルド・ダ・ヴィンチの幻の作品といわれる一枚の絵画が一般家庭で見つかり、オークションで約510億円という高額で落札されるまでの過程と騒動、そしてアート界の闇を映し出す。
話しが進むに連れ、登場する人物達の胡散臭さがどんどん増してゆく。初めは画商やキュレーターに専門家と、そこまではよくあるパターンだが、“ロシアの新興財閥の富豪”が登場して一気にキナ臭さが増し、トドメにサウジの王子様!もう役満からハネ満まで役者が揃った!って感じ。そしてその人らに群がる怪しい紳士達のいかがわしさといったら!フリーポートで作品を保管する…なんてくだりなんかは、まさにリアル「TENET」の世界!
何故この絵画がこれだけの人々を惹きつけたのか。それはやっぱりこの“Salvator Mundi(世界の救世主)”という画題にあったと思う。“ジーザス・クライスト”そのものが題材だし、しかもこの構図。イコンとしてこれ以上ないモノだと言えるし、“レオナルド・ダ・ヴィンチ”というコレまた最強のブランド力。あまりにもわかりやす過ぎる要因が揃っていたのだろう。でも、そんな絵画がムスリムの王子様によって落札されるなんて…。
フランスのこの手のドキュメンタリー作品って、本当に見せ方が上手いなぁ、と思わせられる。今作もドキュメンタリー作品ながら、まるでミステリーのような構成で、観る側に推理させるような展開で進んでいく。
それにしても、あの醜悪なプロモーションPVにまんまと巻き込まれて出演してしまっている、同じレオナルドのディカプリオ。あんなところに彼の底の浅さが垣間見えて「オマエ、そうゆうところだぞ!」ってついつい説教したくなる。
作品終盤のテロップからも、この騒動が現在進行形であることがわかる。どうやら今はサウジの王子様のヨットにかけられているらしい。
あらゆる人々の思惑を巻き込んだこの“喜劇”空の上からダ・ヴィンチはどう見ているのだろうか。
エンドロールも風刺がとても効いていて面白いので必見です。
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