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リコリス・ピザのらのネタバレレビュー・内容・結末

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

観終わった後も何だか余韻で夢見心地。ポール・トーマス・アンダーソンが今こんなにポップでスウィートな映画を撮るとは。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』以前の作品群と比べても最も甘くみずみずしい青春映画。

観ている間は、1970年代のLAを蘇らせた輝かしい映像と、ことあるごとに走る若者たちと、それを捉える移動ショットの快楽にただ身を委ねていればいい。「ファンタジーランド・アメリカ」らしく実際には数々の事件やいかがわしい出来事が起こるのだけど、物語の本筋を辿れば一組の男女が距離を縮めたり、密かに嫉妬しつつやや離れたりを繰り返し、最後にはド直球で結ばれるだけの話なのだ。自分はこのラストのあまりにも潔いラブストーリーとしての帰結に涙ぐんでしまった。

だが、キャラクターはPTAらしく一癖も二癖もある人たち。おそらくキャラクターに真正面から感情移入できる人は少ないだろう(特にゲイリーには)と思える。青春映画というと、いかに"感情移入"させるかというところが大きなフックになりがちだが、こういうキャラクターを用いて青春映画を成立させてしまうところには、やはりPTA節を感じる。15歳の男と25歳の女の恋が普通に成立し、特別不自然に見えないところにもグッときた。『ファントム・スレッド』まで来て本作のような映画を撮った監督の次回作がどういうものになるのか本当に楽しみ。
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