あんず

オマージュのあんずのレビュー・感想・評価

オマージュ(2021年製作の映画)
3.9
なんか見たことあると思って調べると、主人公は『パラサイト 半地下の家族』の家政婦役の人だった。本作では、仕事も家庭も体調も危機的状況の映画監督ジワンを演じている。

監督業存続の危機に、たまたま昔の女性映画監督の作品の音声を修復するアルバイトをすることになり、今よりずっと女性が映画を作ることが困難で表現にも制限のあった時代のことを知る。その修復の過程で自身の生き方も見つめ直す作品で、派手さはないけれど映画を愛する人には心に響くと思う。

『浜の朝日の嘘つきどもと』や『エンドロールのつづき』のように映画が光と暗闇からなる芸術ということが、この作品では多くは語らない代わりに光と影を使った美しいシーンから感じ取れた。また、女性が男性の影に隠れて映画を作らざるを得ない象徴のように、物干しのシーツの後ろに隠れて影で女性2人が語るシーンが印象的だった。

衰退する映画産業とまだまだ社会で男性と対等とは言えない女性たちへのエールを、そっと優しく伝えてくれるような心地好い作品だった。
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