とぅん

オッペンハイマーのとぅんのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

本国から1年近く遅くなってようやく公開。

原爆を生んだ科学者、ロバート・オッペンハイマーの物語。
となれば、日本には辛い内容かなと思っていたし、実際に日本公開が難航したっていういわくつきの作品となったのだけど、観終わった最初の感想は、オッペンハイマーの葛藤が•••とかって話かと思ったら、そこまで原爆のことは取り上げてないんだなってところだったかな。

確かに劇中で戦争を終わらせるために、オッペンハイマーは降伏のための脅威として作ろうってなってたのかもしれないけど、本当のところは政治家は最初っから落とす気満々だったり、っていう件はあった。
けども、メインに据えられてるのは、オッペンハイマーが共産主義やら不倫やら個人的な怨恨やらで、国家反逆的なアイコンに持ってかれてしまう流れのような気がした。これが怖くて最後らへんは結構面白かった。

最後はアインシュタインの言葉どおり、祝賀会は「あの時お前の事を落としたけど、もう時効でしょ?許してね」会なんだぞっていうので終わったし。

3時間という上映時間でも決して長く感じないのはさすがノーランといったところなんだけど、今作はちょいちょいハマらないところもあって、そこまで最高!ってならなかったかな。

特に残念だったのは、事前に広島とか長崎の描写はないのはオッペンハイマーの主観がベースだからって話だったからなるほどーって見始めたら、日本の惨状を写真で知るシーンがあって、何も出さなかったことかな。
観客にオッペンハイマーの葛藤を体験させたいってことなら、出しても良かったんじゃないかと感じてしまったし、何かぬるいなぁと思った。

あと、聴き取りの密室で妻目線でホラーっぽく描写されてたのは良かったけど、この作品に裸は必要だったんだろうか。
ノイズだったなぁというのが正直なところで、今が旬のフローレンス・ピューがめちゃくちゃ頑張ってただけに何だか残念。

この作品を巡る流れ自体もそうだし、オッペンハイマーが爆発音をバックに、ヒーローに祭り上げられるスピーチのところとか、日本とその他の国との温度差みたいなのをしっかり感じられたのは良かったのかも。
なんというか、落とした側と落とされた側の心持ちの違いというか。当たり前っちゃ当たり前なんだけど。

どこを見てもアカデミー賞受賞者だったり、主役級のメンバーが揃う中、私的に過小評価だなぁと思っていたキリアン・マーフィが主役としてアカデミー賞その他で評価されたのは普通に嬉しいな。(対抗馬のポール・ジアマッティも過小評価だと思うからもどかしいところだったけど。)

とりあえず、今作でクリストファー・ノーランには娯楽作というか、自分はやっぱりそういうのを期待していたんだなと再確認した次第。
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