人間が手に負えない代物を産み落とした男の恍惚と動揺。
世界を壊滅する力を手にする集団と、その脅威と対峙した個人を同列に、いかにして愚行に至ったかをどこまでも理論的に解明するノーラン物理学！
特に陰謀や内的葛藤が焦点となっていく後半は一瞬も目が離せなかった。
望んだ世界の進化が戦争を変えてしまう、そんな懸念を抱きながらも政治や知的好奇心など様々な影響により禁断の果実に手を伸ばす…
神でも悪魔でもない人間、そして物理学が可能にした力。物凄い緊張感に包まれるトリニティ実験の達成への歓喜と、そこに何の意味も見出せない恐ろしさが目に焼き付いた。
まるで全能のように世界の仕組みを物理学を通して探究していたオッペンハイマーが見誤ったもの。
〝今だけだよ〟を痛感する事になる公聴会への流れも核の連鎖を印象付けてたし、物理の天才でも対処しきれない人間の底知れなさ…
それを物語るキリアンの表情やダウニーさんの静かな執念にも魅せられた！
原爆の影響を再現したシーンなどはないけど、軽薄な会話や政治家たちの振舞いなど不快感を覚えるシーンも結構あったけど、少なくとも目ぇギンギンで3時間没入したし、アクション映画でもないのに映像と音で引き込むノーランマジックはやっぱ凄い！
