我は死(神)なり
世界の破壊者なり
「原爆の父」と称されるJ•R•オッペンハイマーの栄光と苦悩の人生を描く伝記的作品。
錯綜する時系列はノーランっっっ‼︎て感じだけど、内容自体は彼作品にしては理解しやすい方か(情報量は非常に多いので予習推奨だが)。『TENET 』では敢えて排除したであろう主人公の人間としての感情が本作では具に描かれており3時間があっという間。視覚化される物理と量子、画面一杯に拡がる火球ときのこ雲、白光に溶ける視界、醸成されるスペクタクルな世界観も監督ならでは。
科学者としての矜持と自らが生み出した物への畏れ•責任の狭間に揺れる人間オッペンハイマーの描き方のバランスの妙。変に「戦争反対」「核兵器根絶」みたいな野暮ったいメッセージに偏っておらず、観る側に答えを求めているのが◯。
我々日本人は原爆に関して兎角センシティブになりがちだしまたそうあるべきだとも思う(やはりモヤモヤはする)が、政治的主張は抜きにして人としてのありようを見るべき作品。
人間の人生と感情は多角的であり多元的であるのだから。
追記
アインシュタインやフーバー、J•F•ケネディの使い方が上手い。画面に映らずともあの時代の空気を感じ取ることができる。
