サマータイムブルース

オッペンハイマーのサマータイムブルースのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
180分の長尺ですが、あまり長さは感じませんでした
テンポ良く、強引にストーリーが進んでいくので集中して見ることができました、面白かったです

よく、日本人目線で、広島、長崎の原爆投下のシーンがない、とか、少なすぎる、というような声を耳にしますが、それは違うと思いました
コレはオッペンハイマー(キリアン・マーフィーさん)という人物を中心にしたほぼ伝記ドラマなので、そこを強調しちゃうとまた別のドラマになってしまう、と思ったからです
人物に絞った脚本はベターでした

オッペンハイマー視点がカラーで、ストローズ(ロバート・ダウニー・Jrさん)視点がモノクロで描かれます
事前に予習していたのでバッチリでした
まあ、究極この2人の恨みつらみが発展した争い、みたいな感じでしょうか
ストローズは根に持つタイプですね

初対面でいきなり相手に「卑しい靴売り」って言うのは草!!
しかも、本人酷いこと言ったのまるで気づいてないし、オッペンハイマーは天然系か(笑)
コレはストローズ、ムッとするのも分かる、彼プライド高いんだろうな

この映画のハイライトはやっぱ“トリニティ実験”のシーンだと思います
開発メンバーの1人、テラーが“核の連鎖反応”の可能性を主張します
それは1回の核爆発で大気中の原子に連鎖反応が起きて、大爆発してしまうのではないか、というものです
オッペンハイマーはその可能性はニアゼロ(ほどんど0に近い)と判断して強行します
もちろん結果は分かってるのですが、それでも緊張しました

もし、連鎖反応が起きて大爆発が起こっていたら、我々はここにいなかった可能性が高い
ニアゼロとは言え、失敗した時のリスクが大きすぎて身震いします

後半は“核の連鎖反応”の意味が変わって来ます
米ソ中心に、ひとつの国が核開発に成功したら、ではうちもより強い核を、というよにどんどん連鎖して核開発が進んでいく、と言う意味に変わっていくのが怖かったです
地球滅亡のカウントダウンが始まります

実験成功から程なくして広島と長崎に原爆が投下された、というラジオのニュースが流れます
そのシーンはマジで悲しくて泣きました
それに対してアメリカ人は拍手喝采!!
コレは戦争の終結を意味するもので、立場が違うからなんとも言えませんけど、バンザイしてる彼らだって、現状を知れば決してそんなことできないはずです
一度はすべての人たちに広島、長崎を訪れて欲しいなと思いました

この映画の重要なポイントとして、湖畔でのアインシュタインとオッペンハイマーの会話のシーンがあります
序盤ではストローズ目線(モノクロ)なので会話の内容は聞こえて来ません
しかし、終盤オッペンハイマー目線(カラー)ではその内容が明らかになります
この辺見せ方はなかなか上手いなと唸ってしまいました

アインシュタインはオッペンハイマーからその事実を知って、茫然自失となり、傍にストローズがいるのも気づかずに立ち去ってしまいます
ストローズは彼らが何を話していたのか、すごく気になります

デイヴィト・ヒル博士(ラミマレックさん)は出番少なかったけど、結構重要な役割だったと思います
彼が進言したからストローズがオッペンハイマーを陥れようとした事実が明るみに出た訳で、ストローズの人生を変えてしまうキーパーソンでした

ロバート・ダウニー・Jrさん、オスカーも納得の熱演が光ってました
ちょっと老けた?
あとピューちゃんが身体張って演技していたのが印象的でした

配信来たらまた見て、理解を深めたいです