藍紺

イニシェリン島の精霊の藍紺のレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.3
小さな島に住むおじさん二人の仲違い。親友から絶交された男は自他ともに認める”いいひと”だったはずが、歯車が狂い出しタガが外れ徐々に暴走していく。1923年の話だが、現代に生きる我々も身につまされ、色々と考えさせられる物語になっていた。

マーティン・マクドナー監督によると破局の辛さを語りたかったとのことだが、もう十分語ってましたよ。観てて本当に辛かった。でも辛いんだけど同時に人物造形が上手すぎてうなる。心のすれ違いというありがちなテーマを何故ここまで面白く描けるんだろう?
自分は誠実であると信じて疑わないパードリックが、親友に拒絶され、妹には去られ、見下して馬鹿にしていた青年には失望される。結局彼自身は空虚な人間で、まわりの親しい人達の優しさや慈悲で形成されていたから”いいひと”としてふるまえただけなのかもしれない。環境や人間関係で人格は変わる。
救いは妹シボーン。環境がダメなら捨てちゃえばいいじゃない、とばかりに傷付きながらも軽やかに力強く歩を進める姿は美しかった。知性と知恵は誰にも奪うことはできないと私は思いたい。
監督が当て書きしたとのことで、配役が素晴らしい!コリン・ファレルがヤギのジェニーと瓜二つに見えて仕方なかったw
実は監督の作品って「スリー・ビルボード」しか観たことがないのですが、「ヒットマンズ・レクイエム」私好きかもー。観なきゃ。
藍紺

藍紺