ikumatsu

イニシェリン島の精霊のikumatsuのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「衝撃の結末とは!?」チラシにミスリードされたおかげでエンドロールの瞬間から自分の中でスタートしたこの映画。

突然の絶縁に投げつけられる指。横暴な警官に噂話が好きな店の女。吐き気がする。しかし他人事ではない。コルムのように極端ではないけれど、身に覚えがある。いい人なんだけどね…と言い訳がましく口にする度に実感する、人生の時間を渡したくないという気持ち。

胸がただれそうだ。嫌悪感と愛おしさが混ざった鮮やかな感覚がジュワジュワと広がる。その気持ちをギュッと抱き締めながらロビーに下りていくと、断面までしっかりと再現された指の形のホットドッグ。セットで販売されている黒ビール。この映画館で観て本当に良かった。

なんにせよ、コルムの歳になった時、どこかのドアに指を投げつけないようにしたい。色々ごめんよパードリック。

あんなにも吐き気がしたのにも関わらず、あの湿っぽさが恋しくて翌日も翌々日もイニシェリン島を散歩した。脳内で。



-----
2024.02.27_2度目の鑑賞

この数週間、ずっとこの映画を観たかった。
歳を重ね価値観が確立してくると、鮮明に見えてくるものがある。この世には色々な思想や価値観が存在している。想いの形も様々だ。でも、わたしはもう自分の無駄遣いはしたくない。時間も、愛も。
ikumatsu

ikumatsu