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イニシェリン島の精霊のmaticoのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.8
退屈という理由で、ともだちと絶縁するか?

まず、どストレートに思ってしまった。

友情を捨てて、生きた証として後世に名を残すことにどれだけの価値があるのか。
優しさの欠如が、取り返しのつかない大きな諍いに発展する。
争いのなかで犠牲になるのは、いつも無垢な存在なのだと。
結局戦争は、個人の諍いの延長にすぎない。
作品から読み取れたメッセージはそんなところか。

血まみれでバイオリンを弾く(弾けない)姿からは、狂気しか感じなかった。

シリアスなこの作品を観て、明石家さんまの若い頃のエピソードを思い出した。
有名になる前に、さんまは信号待ちで一般人に突然飛び蹴りされた。
その時さんまが吐いた言葉が、「ナイスキーック!」
飛び蹴りされて、逃げる、怒るという二択しか考えられない中で、
さんまは、その状況を笑いに変えたのだった。

世の中の憎悪は、単純に笑いに変えられるものばかりではない。
自分自身、さんまのような神対応はできる気がしない。
ただ、この作品を観て、もう少し二人にユーモアがあれば、結末はもっと違ったかもしれないと思ってしまったのは、自分だけだろうか。
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