【人生ちょっとあこぎな話】
特集上映『オタール・イオセリアーニ映画祭』にて。
初イオセリアーニ。本当は短編から入りたかったが、中々時間が合わなくて。んが、初っ端コレでよかったのか?…なんじゃこのラスト!www
具象で語る人らしいが、当時の日本企業に、コレに近い実態があったのか?あまりに空想にイキ過ぎて却って、日本蔑視と感じる。ノンシャランと笑って済ませられぬ域だ。
本作が追った、時と場所と人間と欲望、その可笑しな流転、その未来のピリオドとして当時は相応しいと考えたのだろうけれど、時事ネタでなく普遍的なアイデアはなかったのか?胡散臭いマハラジャや、ハレ・クリシュナ一行への視線と違いすぎて、結局は呆れてしまう。
コレ、途中で乱入する、着物姿のヘンな日本女性一行がより、語尾を強めていますねえ。
それ以外はとても興味深く、こういう映画をつくるのかと堪能できましたが。
フランスの片田舎。廃品倉庫に近づくも、まだ金を生む城館が舞台だが、最寄り駅から始まるのがおもしろい。運ばれてきた魑魅魍魎が、素朴な地にサッと放たれ、散るあの怪しさ。
インドからやって来たらしい自称?マハラジャが可笑しくて。ちゃんと身元確認したのかね。公的にはもう、マハラジャは存在しないことを、かの地の人々は知っていたのか?
前半は、長閑ときどきパンクな田舎ぐらしが綽々と綴られ、ニヤニヤと可笑しいが、やがてうとうとしたくなる。…のに、折り返し地点からイヤでも、目が覚める事態に陥ってゆく。
決まった場所での人の動かし方、その時間配分、すごく考えられている点にまず、この監督の作家性が刻まれる。こういう映画は滅多にみなくなった。…みてよかった!
城主のいとこ役初老おばちゃんが、本作の見事な背骨でシャンと締めているが、監督の近所に住んでるおばちゃんを抜擢したそうで驚き!これはジジババ物語…てより、ババときどきジジ物語で、こんなに面白い映画ができるのかと。今の日本では新鮮だ。悲しいことに。
あ、本線から外れたところでは、ちゃんと美人を揃えていましたね。「女の番だ」通りに。
しれっとゴーストが登場するのも効いているが、本作はいわば、城館という名の不動産という名の金、に執着した地縛霊たちの、ドタバタ劇でもありましたね。で、不動産という価値も不動ではなくなってゆくのが、はじめに場所を決めたから、こそのおもしろさ。
あと、監督インタビューを読んでいたら、酔いどれノンシャラン神父は、監督の分身的な人物に思えてきた。たぶん、本音は神なんて信じてないんじゃないか?
彼の激烈に散らかった室内が、どこか城館内にも似ていますが、前夜の食べ残し錯乱テーブルがおもしろい。照明の見事な陰影で、アルチンボルドの静物画っぽく見えてくるwww
光の当たり方で物事は変わって見えるし、実際に変わったりもする。美醜もその中身も。冒頭からこう来たもので、本作にはハマれそう…と高揚したのでした。
…なのに、最後がアレだったので、手放しで褒める気は失せ、モヤモヤして終わりました。
マチュー・アマルリックが出ているらしいが、気づかなかった。…ちっこいからかな?
<2023.3.8記>