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BLUE GIANTのKHのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.5
2024年の年間ノルマ70本中14作品目。
見させて頂きました。

もともと作品自体は知っており、また漫画も読んだ事があります。所持はしてませんけど、なので今作の所謂『東京編』の前に
地元仙台編とでも言うのか、
高校生の頃の宮本大の話も履修はしております。
また、本当は絶対に劇場で観たいなと思っていましたが、如何にもこうにも忙しくて全然タイミングが取れない、また近くの映画館でも上映回数が減っていることや、色々な理由で本当に劇場公開を逃してしまった事を悔やんでも悔やみきれない作品の一つでもあります。
この度はAmazonプライム、Netflixが配信になったので改めて家でじっくり鑑賞した次第であります。

また、作品自体は展開としてどの様なストーリーになるのかは分かっておりますが、
やはりこの手の音楽を扱った漫画原作というのはどの様な演奏になるか、それをどの様に描くかが肝になってくると思っているので、
そこら辺を含めて見極めたいと思います。

まずは作品のネタバレなしの、率直な感想をば述べたいと思います。


『兎にも角にも最高でした。最高に熱く、最高に泣けました。作中で何回泣けばいいんだよ。と思えてしまうほどに、もう上半期で既に今年一に出会ってしまった気がしております。本当になぜ劇場で観なかったのか。
悔やんでも悔やみきれない。
それほどまでに感動してしまいました。
また、やはりなんといっても上原ひろみさんら音楽を担当している方々の重厚さ、そしてその演奏を表現し切っている映像も併せて本当に素晴らしかったです。
とにかく観れる環境がある方は今すぐに見るべき作品、全人類が見るべき作品だと思います。僕の中で最高評価は妥当です』


また、ここからはネタバレを含む感想になりますのでまだ観てない方はご注意を、
また、漫画版のネタバレはせずに、原作との違いなんかも省きます。あくまでも映画のみの感想にします。


まず、この作品の一番の見どころというか、相当強い部分だなと感じるのはなんといっても主人公のフォーカスの移動だと思う。

まず上京して来た宮本がもちろんメインの主人公ではあるものの、その性格を一言で語るなら『ジャンプの主人公』的な、
『世界一のジャズプレイヤーに、俺はなる』
という夢。そこに対する意志が全くブレずに自分のやっている事をひたすらに信じて、どんなに小規模なステージであっても、仮に高架下の練習であっても全力でプレーする。
ある意味不器用というか、それしか自分知りません的な、主人公的ではあるが、キャラクターに魅力があるかと言われればどこか人間味から離れすぎてて感情移入しづらい主人公として存在している。

そこへいって次に雪祈だ。彼は幼少期からずっとピアノを続けて来た自身や技術やプライドに裏付けされた確かな実力者ではあるが、
中盤、ソーブルーの平にボロカスに言われてしまう。

そう考えれば、彼のサークルでの先輩たちに対する接し方や、素人の玉田への当たりなどを考えるに、彼が音楽に対して求めているのはあくまでも『才能』だったり『勝てる勝負をすること』だった。
しかし、平にそこをズバリと切り捨てられ打ちのめされる。
大人がまだ大人になりきれてない青年に対してはかなり厳し目な意見の様にも感じたが、
個人的には『社会に出た時に、他人のためにここまで言ってくれる人はいない』というのが僕の持論なので、
また、雪祈自身も『ここまでいってくれるのか』と理解した様にも感じました。

また、やはりなんと言っても玉田。玉田である。彼は音楽経験が全くないにも関わらず、
親友である宮本がものすごく熱い眼差しで何かに全力で打ち込む姿と、
テキトーにやり過ごすサークルサッカーを比べたのかはわかりませんが、
それでも同い年の友達がここまで何かを熱くやってるのに自分は何をやっているのだろうと感化されたのはいうまでもないが、
それからの練習量はちょっと異常であり、
努力の天才と言える。まぁ宮本と同じ部屋で暮らしてれば仕方ない。。

また、なんと言っても彼の元にサインを求めに来た老人のセリフが、世界一嬉しい言葉であり、
『僕は成長する君のドラムを聴きに来ている』には全人類が泣いてるはずだし、
泣いてないやつとは友達にはないれない。


しかしなんと言ってもそこからの三人が本当に凄まじい。
ボロカスに言われた事で殻を破ろうと努力する雪祈がゲストピアニストとして、
それこそ内臓がひっくり返る様なソロを魅せた事で、ついにソーブルーへの出演が決まる。

個人的に演奏中の演出で、雪祈の時に
冷たい氷の様な表現が多く出てくるが、あそこが本当に最高というか、熱い中にも、どこか冷静さを保ちつつ、それでもなお熱く。
この作品のタイトルにもなっている

熱すぎて逆に青くなってる。を映像として見せてくれている部分の様に思います。

また、結果は知ってますが、この後本当に最悪なタイミングで雪祈が事故に遭い、
まさかのサックスとドラムでの出演となってしまいました。

本当にここの描写が辛すぎるというか、
最高の瞬間をぶった斬るトラックと、ぐちゃぐちゃになった腕が本当につらすぎる。
少なくとも、三人の中で1番ソーブルーに立ちたがっていたのは雪祈であり、

彼が直談判の際に、『ソーブルーを舐めたことなんか一度もない』と言っていたのは事実であり、軽薄な部分は確かにあったが、そこだけは心の底から熱い言葉を吐いた様に思う。だからこそ業界の大御所にもその熱意が伝わったのかなと、

そこから実際のライブで玉田の魅せるドラムソロは不安になる程長いバスドラのキックからまるで感情をストレートにぶちまける様なドラム回しというか詳しいことはあまりわからんけど、泣きたい感情を我慢してる様な演奏にはこっちはむしろ涙を堪える事がでないでおりました。
なんというか、雪祈が事故を起こしてからずっと泣いていた様に思います。

ライブを終え、アンコールを迎える時にボロボロの雪祈が駆けつけ、アンコールに出ると告げる。
つまりこれが最後の舞台になるという事。
夢の舞台で三人で立てたことの嬉しさや、なんで事故なんか起こっちゃったんだよという悔しさや、
色々な感情や運命、そんなのが涙となって溢れる。玉田がすごく泣いていたのが個人的にものすごく嬉しかったというか、

世界一のジャズプレイヤーになる事が夢だと語る宮本や、勝つための音楽、才能の世界と語る雪祈、しかし玉田は三人でやりたいと言うことを1番に考えてたから、溢れ出ちゃったんだなと感じます。

会場に雪祈が現れるとびっくりする観客たちの反応が個人的にすごく嬉しいと言うか、
音楽ってやつは、ジャズってやつはこんな状態でもやりたいと、ボロボロの身体を引きずってでもやらなければならない時があるのかと、口に手を当てて涙を堪える人もいて、
僕もそんな観客の1人でした。

また、そこからの演奏はまさに伝説というか、神がかり的で、映像は遂に宇宙まで辿り着いたのが印象的でした。
まるでブラックホールの様に観客も全て飲み込んでしまっているかの様で、本当に最高の時間でした。

ラストは空港で宮本が、療養しながらも作曲を続ける雪祈に電話をかけ、
『早く戻って来い』と告げたところで終わります。
例え右腕が元通りにならないとしても雪祈なら絶対にもっと成長して戻ってくると信じて疑わない宮本の言葉が嬉しくて涙を流しながらも、バーカと強気で返すのがとてもいいエンディングでした。

もう本当に言うことないです。最高でした。
演奏中の3DCGが少し荒いと言うか違和感みたいなのが感じなかったかと言われれば、確かにありましたが、
それは本当に些細なことなので、むしろ音楽もしっかりと聞けたと言う部分ではあれで良かったと思います。
あそこをもっと金かけて描き込まれでもしてたら今度は映像にばっかり意識がいっていたかもしれないと思うと、ベストだったのではと感じます。

本当に僕の中での最高評価は妥当で、年に100本近く映画を見ますが、これほどの作品にはなかなか出会えないので、
上半期にこれを見てしまって後半どうなっちゃうのだろうと感じてます。

パンフレットも欲しかったなぁ。。

今回はこれぐらいにします。
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