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デリシュ!のSPNminacoのレビュー・感想・評価

デリシュ!(2021年製作の映画)
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公爵お抱えだった誇り高き料理人と、訳あって彼に弟子入りした女性がやり直すために始めた旅籠。それがレストランのはじまりに。18世紀フランスでジャガイモやトリュフは食材としてまだ定着してなかったとか、興味深い史実を踏まえつつも、お話は創作である。
食は階級格差そのものであり、文化でもある。貴族の贅沢な飽食ぶりと飢えた庶民を対比して、更にルソーやパリの事情に詳しい若い息子が新しい時代を代弁。貴族にとって料理は権力だが、庶民には腹を満たす幸福。なので一般庶民に開かれた食堂はフランス革命に先駆けた、もう一つの革命だ。
憎き公爵への雪辱を果たす手段もあくまで料理。美味しいものは平和的な武器になる。ジャガイモの恨みはジャガイモで晴らす…だけでなく、庶民と同じものを食わせることが権力や権威を壊すこと。
派手な見せ場はないけど、グレゴリー・ガドゥボワが結構大変な目に遭いながら抑えた演技と、バンジャマン・ラベルネのバカ殿っぷりがいい。油絵のように陰影深く撮られた料理も美しかった。
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