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ラーゲリより愛を込めてのtakaのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.0
重いテーマと豪華俳優陣を上手にさばき素晴らしい作品に仕上げた瀬々敬久監督はさすがです。特に二宮和也の演技は群を抜いていました。
私の父もシベリア抑留経験者でしたが、生涯その経験は一言も話しませんでした。恐らく実在の登場人物たちもこの映画以上の経験をしたのだと思うと「戦争の準備」に前のめりになっている最近の風潮に背筋が凍る思いです。とはいえ、かつての戦争が今日の日常につながっているという警鐘を鳴らす意味でラストの結婚式の場面を入れたのでしょうが、それは観客に言葉ではなく画で問いかけた方が良かったように思いました。
また、日本人が被害者として描かれる今作のような映画はいくつかありますが、日本人あるいは日本国が加害の立場で描かれた映画は極端に少ないことが気になります。かつて映画評論家の佐藤忠男さんは「映画はその国民の自惚れ鏡」の側面があると言っていましたが、言い方を変えれば日本人はまだ日本という国を相対化できていないということなのかも知れません。
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