こなつ

ラーゲリより愛を込めてのこなつのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.0
評判の良い作品だったが、なかなか時間が合わなくてやっと鑑賞。週末の映画館。予想以上に若いカップルが多くて驚いた。

辺見じゅんのノンフィクション小説「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」の映画化というのだから、これは実話に基づいた本当にあったことだと思うと観ていてとても辛かった。

戦後シベリアに抑留された日本人は約60万人、そのうち7万人が亡くなったというから、どれだけ過酷な強制労働をさせられていたか想像がつくが、映画化された作品は、想像を絶する光景が続き言葉を失う。

しかし、この作品が伝えたかったのは、先の見えない過酷な日々の中、希望を捨てず帰国を信じて周りの人々を励まし続けた一人の男性、山本幡男(二宮和也)の生き様なのだろう。

零下20度の極寒の地での強制労働、僅かな食料、誰もが心を閉ざしている。

戦争で心に傷を負い、関わり合いを避ける松田(松阪桃李)旧日本軍の階級を振りかざす相沢(桐谷健太)足が不自由で字も読めないが純朴な青年・新谷(中島健人)過酷な状況で変わり果ててしまった先輩・原(安田顕)
そんな彼らが山本により希望を取り戻し、最後の最後、山本の為にしようと決めた贈り物を、日本でひたすら待っていた山本の妻(北川景子)に届ける奇跡。役者達の渾身の演技に涙なしには観られない。

彼らの心を癒してくれた愛犬クロ、クロの名演技がまた一層涙を誘う。

シベリアに残された抑留者達の最後の帰国が戦後11年であったということには本当に驚いた。戦後11年といえば、日本は急速に経済成長が始まり、白黒テレビや電気冷蔵庫や洗濯機が一般家庭に普及し始め、もはや戦後ではなくなっている時代だ。

現在のロシア情勢を鑑みても、決して過去の事とは思ってはいけないと身に染みて感じられる作品だった。
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