えむ

僕を育ててくれたテンダー・バーのえむのレビュー・感想・評価

3.9
別れたクズ親父のせいで苦労するお母さん、でもその代わり、僕には気にかけてくれるおじさんがいたーー

そんな作家の自叙伝の映画化作品です。

バーを営むおじさんは、社会的には高尚とは言えないけれど、そこかしこで気にかけ手を差し伸べてくれるし、背中を押したり時に援助してくれたりして、二人の関係は凄く素敵。

小さい頃から苦手なものは諦めろとハッキリ言い、でも好きなこと、才能がありそうなところは伸ばそうとしてくれる。 そんな存在は貴重。

バーに集まる飲んべえ達が、成人して初めて友人連れてバーに来た時に、こぞってお酒を奢ってあげようとしたり、飲みながら人生経験話したりするシーンがとても好きです。

地位がなくても、多少クズでも、こういう経験豊富な人生の先輩たちと交わるって、大事なこと。
そこでしか教われない事ってあるからね。

若者たち、ファーストアルコールの体験がこの店で良かったね!
卒業記念で飲んでるときにそれがリフレインされるのも感慨深い。

JRは父の幻影をどこかで追いかけてはいるけれど、恋をしたり多くの経験もするけれど、そこにはいつも家族もおじさんもいて見守ってくれている。

青春の時代、子供だった時代を終え、現実の波に揉まれた後で、最後には元カノや父親の幻影を断ち切って未練なく次へ巣立って行けて良かったと思う。

おじさんの餞別がこれまた粋。
もうこのおじさんはひたすら粋、このひと言に尽きます。

全般通して人の優しさに満ちた良い作品でした。
自叙伝ベースなだけあって、青春ロードムービー的な作りも雰囲気あってカッコ良いです。
えむ

えむ