そそ

デューン 砂の惑星PART2のそそのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.2
初見時はかなり微妙な印象だったが、結局3回観に行ってしまった。好きです。
まず、ポールの英雄譚として負の面が強調されるリアリスティックなアプローチがとても好み。確かに、”予言”に従い”救世主”を崇める事、そしてその1人に権力を託す事は危険性を孕む。それをチャニを経由して客観視することで、政治と宗教が入り組むプロットによる普遍的な射程を広げている。かつ、自己を模索する主人公・強き女性像というヴィルヌーヴらしいテーマが顔を出し始め、単なる白人救世主もので終わらない重層性が生まれていた。古典的物語を現代的にブラッシュアップさせていてとてもグッとくる。
前作では顔見せ程度だったフレメンの風俗がハッキリとした輪郭を見せるのも良かった。死者を還元した貯水庫、ミニ砂虫の捕獲、テント、対採集機戦略など、ディテールがとにかく細かい。フレメンを得体の知れぬ原住民としてでなく、1つの擬似家族的集団として描くことで、ポールのフレメンとしての成り上がり譚が非常に魅力的になっている。前作のフレメンパートに全くハマれなかった身としては、素直に楽しかった。今作随一のスペクタクルシーケンスであるサンドワーム搭乗の高揚感も言わずもがな(砂嵐を抜けて視界が一気に明瞭になるあのスケール感にとても興奮したので、そこをもっと長尺で見せてほしかった!)。
そしてなんと言ってもフェイド=ラウサ!純粋無垢さと残虐さが同居したサイコ坊ちゃんという感じで、高尚な目的も思想もなく欲望のまま着々と仕事を熟す姿は間違いなくMVP。特に闘技場シーケンスは今作の白眉といっても過言でない。白黒だからこそハルコンネンに支配されたジエディ・プライム内の独裁的主従関係の病的な強固さが表面化しているのは勿論、陰影がハッキリする事でフェイドの表情が明瞭になっており、初登場シーケンスとして圧倒的大正解なアプローチだ。前半のメインヴィランだったラッバーン(今まで誇示していた力がへし折られる哀しさ、、)との対比でその有能さをスマートに描写するのも見事。
ハンス・ジマーの透明感のある劇伴、スクリーンに余すこと無く砂漠を捉えるグレイグ・フレイザーの絵ヂカラも良かったです!個人的には前作のオブジェクトが無機質に並ぶ冷たくシックなショットが好みでしたが、、
表面的なキャラクターアーク、クライマックスの消化不良感、長尺故の中弛みなど気になる所はあるが、超豪華キャストによる超壮大な叙事詩として大満足でした。ヴィルヌーヴにはこのままpart3もやってほしいしけどオリジナル作品もやって欲しいので、続きは気長に待ちます。
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