「結末はけっして明かさないでください」と言われるように、その衝撃は本作の最大の「売り」だが、それにとどまらない、全編にわたって愛にあふれる繊細な表現こそが魅力。
わたしたちがいかに「みずからの視点」>>続きを読む
「マタイによる福音書」をほば忠実に映像化した傑作。
聖書の言葉が淡々とつらねられるが、そこにはよけいな心理描写も解釈もない。
職業俳優ではない出演者たちのもの言わぬ「顔」の豊かさがつくりだすリアリテ>>続きを読む
なだたる名作のかげに隠れてしまってはいるが、「このいまいる世界は誰かの想像/創造の産物なのではないか」という、古くから繰り返されてきた哲学的な問題に、直球で切り込んだ作品。
逆に言えば、その問題意識>>続きを読む
夢と希望、そして他人へのちょっとした愛情を忘れかけているすべてのひとが見るべき、おとなのためのこころあたたまるファンタジー。
歴史上の人物たちとガンプが「共演」するが、まさに彼が走り抜けたのはアメリ>>続きを読む
圧倒的なおもしろさをほこる第一作にまさるとも劣らない第三作。
前作での伏線を回収し、ウェスタンの世界観のなかで展開するものがたり。
なんと言ってもドクことブラウン博士を演じるクリストファー・ロイドの>>続きを読む
第一作ほどの完成度はなく、より複雑に交錯する時間軸も欲を出してまとまらなかった印象。
最終作への重要な橋がかりとしての作品。
理屈抜きに楽しいタイムトラベルものの名作。
パラドックスもなんのその、無理やりな展開もおかまいなく、デロリアン号は痛快に時を超える。
車谷長吉の原作も独特の世界観を持った傑作だが、本作は原作をほぼ忠実にえがきながら、それとはまったく異なったテイストに仕上がった秀作。
キャリア初期からその類まれなる才能を見せる寺島しのぶの熱演。
内>>続きを読む
才能ある若き料理人を演じるミカエル・ユーンと、一流シェフ演じるジャン・レノのユーモラスなでこころあたたまるやりとり。
定型どおりのライトコメディだが、観ただれもが幸せになる一本。
なかなか面白そうな滑り出しかと思ったのもつかのま、稀にみる駄作。
中盤からは中東の観光案内を目的とした映画なのかと思えてきた。
トム・ハンクスも、仕事は選んだほうがいい。
シリーズ第五作。
『ダーティハリー』シリーズを通底していたテーマは影をひそめ、どこにでもありそうな犯罪ドラマになっている。
キャラハンも老いたが、シリーズとしても抜け殻に。
ラストをきめるM29で>>続きを読む
シリーズ第四作。
イーストウッド自身の監督で、典型をあえてはずした展開が効果的で、緊張感あるサスペンスにしあがっている。
法が裁かない悪と、そしてそれを排するための超法規的手段はどう裁かれるのか、と>>続きを読む
シリーズ第三作。
90分とコンパクトだが、無駄なくまとまった良作。
タイン・デイリー演じる新米女性刑事との異色コンビが魅力的。
シリーズ二作目。
前作では超法規的な立場から悪に立ち向かったキャラハン刑事が、今作ではその超法規的な自警グループにたいして否定的な立場をとる。
前作との矛盾について、説得力は残念ながらここにはない。>>続きを読む
『ダーティハリー』シリーズ第一作。
法の秩序では裁けない悪にたいして、超法規的な例外者となったイーストウッドが挑むという、西部劇の現代版。
犯人役のアンドリュー・ロビンソンの怪演が印象に残る。
イーストウッドをして「これで俳優は引退する」と言わしめた(実際には復帰するのだが)のもうなずける、記念碑的な傑作。
多民族国家アメリカの負の部分をためらうことなくえがきながら、そこに血のつながりをこ>>続きを読む
クリント・イーストウッド監督・主演の神々しいまでの完成度をたたえた西部劇。
西部劇というジャンルそのものをメタレヴェルから見たようなハードなタッチでえがいた感動的なものがたり。
善悪の彼岸にある、も>>続きを読む
怪獣パニック映画の、古典中の古典たる不滅の名作。
ここにすでに、ありとあらゆる典型が完成されている。
1933年の映画であるが、この時代にしてこれだけのものを作ることができたのは奇跡としか言いようが>>続きを読む
ひたすらチャーチルを演じたゲイリー・オールドマンの名演技に敬服するほかはない。
狂気を秘めた役を得意とするこのカメレオンのような怪優の実力がいかんなく発揮されている。
非常時に必要なのは、いずれの立場>>続きを読む
さまざまなSF映画、アドヴェンチャー映画、コメディ映画などの要素をこれでもかとないまぜにして、ポップな色彩感でえがかれた娯楽大作。
ツッコミどころは満載だが、それもふくめて気楽に見られるところがよい>>続きを読む
ミルクしか飲まない凄腕の殺し屋と、彼をたよるしか生きる道のない少女との、奇妙だがこころあたたまる共同生活とその果て。
ナタリー・ポートマンの見せる幼く透明な愛。
不器用な男を演じきるジャン・レノ。>>続きを読む
つめたくタッチでハードにえがかれる悲しくも美しいものがたり。
その全編にわたる無機的な空気が、登場人物の誰へにも見るものを近づかせない距離感をつくっているよう。
ジャン・レノ演じる掃除人ヴィクトール>>続きを読む
そこで行われていることの醜悪さにもかかわらずスクリーンから眼がはなせないのは、徹底的に作りこまれた美しさに満ちているからだ。
理性や調和がキリスト教的な世界観だとすれば、「アンチクライスト」とは欲望>>続きを読む
キューブリックの不朽の名作『2001年宇宙の旅』にたいする、いまのところもっとも完成度の高いオマージュと言えるだろう。
時間と空間のつながりを意図的に錯綜させ見るものの認識を揺さぶるクリストファー・>>続きを読む
映画ときってもきりはなせない関係にある「夢」。
なにが現実で、どこまでが夢なのか。
くりかえしとりあげられたその問いを、ノーラン監督らしい重層的な構成でえがいてみせた傑作。
入れ子になった夢の構造さ>>続きを読む
「ダークナイト三部作」のラストをかざる三本目。
「例外」としての存在であることやめたバットマンが、ゴッサムシティを守るために再びたちあがる復活劇。
正義を守るための不正義という前作からのテーマは、本>>続きを読む
「ダークナイト三部作」の二本目。
ひとことでいえば、秩序を守るための正義がその秩序のそとに「例外」として存在することのあやうさを浮き彫りにした作品。
それはすべての「アウトロー」たるヒーローにいえる>>続きを読む
ノーラン監督による「ダークナイト三部作」の一作目。
バットマンはなぜバットマンであるのかという、彼がその姿でいなければならないその根拠をていねいにえがいた傑作。
クリスティアン・ベール、マイケル・ケ>>続きを読む
タイプのことなるふたりのマジシャンのものがたり。
時間軸を交錯させるノーラン監督の手法が見るものの認識を混乱させるが、それが逆にものがたりの構成そのものにリアリティを与えることに成功している。
映画>>続きを読む
前向性健忘症の男が、殺された妻の復讐のために生きるものがたり。
時間軸の進行が過去→現在ではなく、さかのぼってえがかれていくという、きわめて実験的な手法が完全に成功している。
10分ほどの記憶しか残>>続きを読む
類似のタイトルの別作品にくらべてそこまでの知名度はないが、圧倒的な面白さと美しい絵面の数々は、これぞ映画の愉しみというしかない傑作。
笑いと悲しみが、アートとエンターテインメントが、優しさとハードボ>>続きを読む
スパイ映画の王道パターンをこれでもかとなぞる娯楽作品。
いちど聞いたら耳から離れないテーマ音楽。
古典的な美しさをたたえた名作。
すべては典型の枠を出ることはないが、それでもスタイリッシュな魅力に惹かれる。
若きケビン・コスナーや名優ショーン・コネリーも素敵だが、なんといってもアル・カポネを演>>続きを読む
メタ構造をもつ構成が盗作ではないかと話題にはなりはしたが、それについてはよくあるパターンで新しいとは言えない。
しかしそれでもよくまとめられており、理屈抜きに楽しめるエンターテインメント。
やや画面に>>続きを読む
現実と妄想のはざまをキャリアの初期からえがいてきたオゾン監督が、そのテーマを徹底的に追求した完成度の高い傑作。
鏡に映る姿は、ほんとうに自分自身なのか。
おなじ顔を持つ二人の男、そして彼女自身も…>>続きを読む
なにが現実で、とこまでが妄想なのか。
その境界線をひくことがわたしたちには原理的には不可能だということを、オゾンは見るものに示す。
冒頭のテムズ川の淀んだ水面はなにも映し出してはくれないが、覆いを>>続きを読む